小型肺癌に対する標準術式

Segmentectomy versus lobectomy in small-sized peripheral non-small-cell lung cancer (JCOG0802/WJOG4607L): a multicentre, open-label, phase 3, randomised, controlled, non-inferiority trial.

Saji H et al.
Lancet. 2022 Apr 23;399(10335):1607-1617.
PMID:35461558.

Abs of abs.
若いステージの非小細胞肺癌に対する標準療法は肺葉切除術である。これまで無作為化試験による区域切除術の生存率、有効性についての検討はない。今回は小型末梢非小細胞肺癌において、区域切除術が肺葉切除術と比較して非劣性かどうかを検討した。日本の70施設で無作為化対照非劣性試験を実施した。臨床病期IA期の非小細胞肺癌(腫瘍径2cm以下、コンソリデーション/腫瘍比0.5以上)患者を、肺葉切除術と区域切除術のいずれかに1対1で無作為に割り付けた。無作為化は最小化法によって行われ、施設、組織型、性別、年齢、HRCT所見について両群が同じになるようにした。どちらの治療群かは主治医と患者にマスクしなかった。主要評価項目は、すべての割り付け患者の生存であった。副次項目として、術後呼吸機能(6カ月および12カ月)、無再発生存、局所再発の割合、有害事象、区域切除完遂の割合、入院日数、胸部チューブ留置期間、手術時間、出血量、自動吻合機の使用本数とした。生存は、ハザード比(HR)の95%CI上限の1.54の非劣性マージンとし、層別Cox回帰モデルを用いて推定したITT集団で解析した。2009年8月10日から2014年10月21日の間に、肺葉切除術(n=554)または区域切除術(n=552)を受ける予定の1106人の患者(ITT集団)が登録された。患者の背景因子は、両群間で十分にバランスが取れていた。区域切除群では、22名が肺葉切除術に変更され、1名が広範囲楔状切除を受けた。追跡期間中央値7.3年(0.0-10.9)において、5年生存率は区域切除術で94.3%(92.1-96.0)、肺葉切除術で91.1%(95%CI 88.4-93.2)であり、層別Cox回帰モデルにより全生存の優劣を確認した(HR=0.663[0.474-0.927]; 非劣性について片側p<0.0001、優劣についてp=0.0082)。区域切除群では、すべての事前既定のサブグループで一貫して全生存期間の改善が認められた。1年後の追跡調査において、両群間のFEV1.0中央値の減少は3.5%(p<0.0001)で有意ではあったが、事前に定義していた意味のある数字としての閾値である10%には到達しなかった。5年無再発生存率は、区域切除術で88.0%[85.0-90.4]、肺葉切除術で87.9%[84.8-90.3]だった(HR=0.998[0.753-1.323]; p=0.9889 )。局所再発は、区域切除術で10.5%、肺葉切除術で5.4%であった(p=0.0018)。肺葉切除術と区域切除術の後、それぞれ83人中52人(63%)と58人中27人(47%)が他の病気で死亡した。30日および90日死亡率は観察されなかった。グレード2以上の術後合併症は両群で同程度生じた(肺葉切除術142人[26%]、区域切除術148人[27%])。本研究は、小型末梢非小細胞肺癌の全生存において、肺葉切除術に対する区域切除の利点を示した最初の第3相試験である。この知見は、区域切除術がこの患者集団の標準治療であることを示唆している。

感想
日本発のエビデンスで2㎝未満の小型肺癌に対する標準治療を変える試験です。この試験は一次登録を術前に行い、術中に開胸所見でリンパ節転移がないこと、肺葉切除/区域切除いずれも可能と判断された上で、2次登録し術中にランダム割り付けされています。手順的に非常に面倒なことを見事にクリアされ1000例を超える症例を登録されています。この試験はもともと非劣勢の設定で5年生存を90%、85%くらいまでは許容と考えて、それに対応するハザード比を1.54としてこれを非劣勢マージンに採用したようです。つまりこのあたりが事前の見込みで、勘の良さも素晴らしいところです。結果として5年生存は両群とも90%を超え生存曲線上は区域切除がむしろ良好に見えます。5年無再発生存率も区域切除88%、肺葉切除87.9%と全く同じで少なくとも同等性は十分です。ただ局所再発が11%対5%で区域切除群に多かったことが挙げられていますが、もともと非劣勢の設定であったことから多少の不利はむしろ当たり前と言えます。生存に関してのサブグループ解析も性別、年齢(70以上)、部位、組織すべてにおいて区域切除の方が良好でした。今後日本ではこの術式が標準と考えますが、CALGB140503という同じコンセプトで行われている試験の結果が2024年にわかるようです。この結果がpositiveなら全世界的に小型肺癌は区域切除が標準と認められるでしょう。