小細胞肺癌、LCNEC完全切除例に対する術後治療

Randomized Phase III Study of Irinotecan Plus Cisplatin Versus Etoposide Plus Cisplatin for Completely Resected High-Grade Neuroendocrine Carcinoma of the Lung: JCOG1205/1206.

Kenmotsu H et al.
J ClinOncol. 2020 Nov 2:JCO2001806. Epub ahead of print.
PMID:33136471.

Abs of abs.
病理学的stageⅠ-ⅢAで完全切除された肺高悪性度神経内分泌癌(HGNEC)患者に対する術後補助化学療法としての、シスプラチン+イリノテカンがシスプラチン+エトポシドに対し優越性があるかを検討した。本試験は、I-ⅢA期高悪性度神経内分泌癌(HGNEC)の完全切除例を対象とした無作為非盲検第Ⅲ相試験である。患者はシスプラチン+イリノテカンまたはシスプラチン+エトポシドのいずれかを4サイクルまで受けるように無作為に割り付けられた。プライマリーエンドポイントは、ITT群における無再発生存期間(RFS)である。2013年4月から2018年10月までに221例が登録された(シスプラチン+エトポシド111例、シスプラチン+イリノテカン110例)。2回目の中間解析において、無効のため早期の試験終了を勧告された。追跡期間中央値24.1ヵ月時点での3年RFSはシスプラチン+エトポシド群で65.4%、シスプラチン+イリノテカン群で69.0%であり、ハザード比1.076[0.666-1.738];P=0.619)であった。グレード3、4の有害事象はシスプラチン+エトポシド群で多く、発熱性好中球減少症(109例中20%と107例中4%)と好中球減少(97%と36%)が最も多かった。一方、シスプラチン+イリノテカン群でより高頻度に認められたのはグレード3、4の食欲不振(6%対11%)と下痢(1%対8%)であった。シスプラチン+イリノテカンは、完全切除後のにHGNECのRFSの改善においてシスプラチン+エトポシドよりも優れてはいなかった;したがって、シスプラチン+エトポシドが標準治療のままである。

感想
進展型小細胞肺癌に対してシスプラチン+イリノテカンがシスプラチン+エトポシドに対し優越性を示したJCOG9511は今でも大きな金字塔として、日本のガイドラインでも存在感を持っています。しかしその後の海外の複数回行われた追試では証明できず、また最近は免疫チェックポイント阻害薬の追加により標準治療が混沌としています。また過去に記事にしたように日本の小細胞肺癌治療はアムルビシンの存在や、PCIに対する考え方などで独自の進化を遂げています。
さて今回は高悪性度神経内分泌腫瘍として小細胞肺癌とLCNECを対象として研究されました。LCNECは小さい気管支鏡検体では診断しにくい(今回の参加者の術前診断は5-6割)のと、未診断腫瘍として切除したら小細胞肺癌であったというケースで、術後化学療法はどうするかという臨床テーマとなります。純粋なSCLC、LCNECとも35%程度両群に含まれており、また今回はcombinedも許容されています。結果として、RFSではシスプラチン+イリノテカンでもシスプラチン+エトポシドでも変わらず、特にSCLCでもLCNECでもほとんど差が見られませんでした。全体での現時点でのOSはシスプラチン+エトポシドの方が若干上を行く印象ですが、これもほとんど差がありません。より進行傾向にあるⅡ-ⅢA症例に絞っても差はなく、むしろシスプラチン+エトポシドが優勢に見えます。今回は非劣勢の設定ではないので両レジメンとも同じという結論にはならないのですが、どこであっても敢えてシスプラチン+イリノテカンを使う理由はない、ということになります。