抗PD-1抗体無効後のPD-L1抗体:アテゾリズマブ投与

Phase II Clinical Trial of Atezolizumab in Advanced Nonsmall Cell Lung Cancer Patients Previously Treated With PD-1-Directed Therapy

Fortman D et al.
Clin Lung Cancer. 2025 Jan;26(1):78-81.
PMID: 39578170

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非小細胞肺癌において、PD-1阻害薬使用後に引き続きPD-L1阻害薬を投与する前向きデータは限られている。 今回はPD-1阻害薬治療後のアテゾリズマブの第Ⅱ相試験を報告する。前治療歴のある進行非小細胞肺癌患者を、ニボルマブまたはペムブロリズマブ前治療に対する奏効によって3つに割り付けた、内訳はPD判定(コホート1)、SD判定(コホート2)、PR/CR判定(コホート3)である。アテゾリズマブは1200mgを3週間ごとに静脈内投与した。 主要評価項目はRECIST評価による最大奏効であった。 各コホート内において、最初の11人で1人も奏効しなかった場合、Simonの至適2段階デザインを用いて無益と判断し停止することとした。28人の患者が登録され、アテゾリズマブによる治療を受け、そのうち24人はその後X線画像診断を受けた。 コホート1では、17例中2例が9ヵ月および3ヵ月持続するPR(11.8%[1.5-36.4])を達成した。 コホート1は2段階計画の第2段階に進む基準を満たしたが、このコホートと他のコホートは登録が遅々として進まず、早期に終了した。 コホート3ではさらに1例がPRを 21ヵ月継続した。グレード3以上のTRAEは14.3%に発現した。本治療によりPD-1阻害薬治療後の患者において持続的な奏効が認められた。約10%の奏効率は、免疫療法後の新規免疫療法併用療法を評価する際の基準となることを示唆する。

感想
PD-1阻害薬とPD-L1阻害薬は違うのかという問題を考える資料となる研究です。日常臨床でもペムブロリズマブが効かなくなって、何らかの殺細胞性抗がん剤を行ってもう一度ICI投与を検討する場面があります。その場合PD-L1抗体に変えて試してみるという方もいます。両者の間にわずかな作用点の違いが基礎的に証明されていますが、なかなか差が見える程でもないというのが実情です。引用にもある通り2次治療以降のアテゾリズマブ単剤を検討したTAIL試験[Ardizzoni A J immu Can2021 PMID:33737339]では、PD-1治療歴のある患者での奏効率は2.6%、PFS1.6か月でした。
今回は前ICI治療の反応によってグループ分けされており再投与の参考になります。まずPD-1抗体が全く効かなかった例は11.8%の奏効を示しもっとも良く、コホート2(PD-1抗体でSD)は途中までですが奏効例はなく、コホート3(同PR/CR)で1人の奏効でした。つまり最初のPD-L1が効かないか、はっきり奏効した場合はPD-L1抗体を試してみても良いが、SDの場合はあまり意味がないことが示唆されます。他にもTPSや、どれくらい間隔が空いたのかなどまだまだ修飾する因子が多いように思います。またデュルバルマブ地固め後などPD-L1→PD-1抗体の結果も似たようなものかどうかも気になる所です。