胸水貯留例へのペメトレキセド投与の血液毒性増加

Haematological toxicity of pemetrexed in patients with metastatic non-squamous non-small cell carcinoma of lung with third-space fluid.
Kwok WC et al.
Lung Cancer. 2020 Dec4;152:15-20.
PMID: 33338923.

Abs of abs.
ペメトレキセドは、進行非扁平上皮非小細胞肺癌と悪性胸膜中皮腫の治療薬として、プラチナ製剤との併用でFDAより承認されている。この薬はメトトレキセートと構造が似ていることから、サードスペースに蓄積して毒性が高まる懸念がされている。これまでの小規模研究ではこの結論が得られていない。今回は単施設で後ろ向きコホート研究を行った。この研究は、ペメトレキセドとプラチナ製剤を初回治療として投与された進行非扁平上皮非小細胞肺癌患者329人について解析されている。治療を受けた中でサードスペース貯留液を排出していない患者、排液している患者とサードスペース貯留液のない患者を比較した。主要エンドポイントは血液毒性の発現とした。サードスペース貯留液があり排液されていない患者は、貯留液の存在しない患者と比較してグレード3以上の血液毒性(オッズ比=2.450、p=0.002)、投与延期(OR=3.837、p=0.000)、および用量調整の必要性(OR=2.436、p=0.022)と有意に関連していることが示された。サードスペース貯留液を排液した患者では、これらの有害事象はなくなっていた。進行非扁平上皮癌患者におけるサードスペース貯留液を排液せずにおくことは、ペメトレキセドとプラチナ製剤による化学療法を行った場合に、有意な血液毒性が起こりやすい状態となる。ペメトレキセドとのプラチナ2剤を開始する前に、サードスペース貯留液の排液を考慮すべきである。

感想
実地臨床に還元される結果で重要な点はグレード3以上の血液毒性が、非貯留群33.7%、排液群37.1%、非排液群59.7%と差が見られたことです。また発熱性好中球減少は同じく2.2%、1.3%、3%とわずかに増加傾向が見られています。用量減量は9.8%、12.8%、20.9%に必要となっています。奏効率は47.8%、48.8%、41.8%とわずかに下がる程度ですが、総合して考えると胸水などの貯留液を排液せずに抗がん剤治療を行うとDose intensityが下がり効果が落ちる傾向にあるということになります。エビデンスがあるかどうかわかりませんが、胸水が多いと薬剤リザーバーの働きをするとも言われてきました。QOL維持の面からも治療前に排液可能なら排液しておくのが、昔からの基本です。