間質性肺炎合併肺癌の手術成績

Survival after surgery for clinical stage I non-small-cell lung cancer with interstitial pneumonia.

Fukui M et al.
Lung Cancer. 2022 Jan 4;165:108-114.
PMID:35114508.

Abs of abs.
I期肺癌で特発性間質性肺炎(IIP)患者の手術後のアウトカムを調査した。2009年から2018年に肺切除術を受けたI期の非小細胞肺癌2131例を後ろ向き解析した。CT画像ではIIPは233人に認められた。IIP180人、非IIP1227人に肺葉切除が行われていた。それらについて予後、再発部位、死因を調査した。さらに、IIP患者については腫瘍と肺門の距離を測定し、縮小手術の可能性を評価した。IIP患者の全生存期間と癌だけの生存期間は、非IIP患者より有意に不良であった。病期がIA/IBのの5年生存率は、IIPで58.1%/47.3%、非IIPで88.8%/68.9%であった。さらに、術後2年以内の呼吸器関連死亡は、IIPで9.4%、非IIPで0.9%であった。多変量解析では肺活量80%未満(オッズ比:3.259),通常型間質性肺炎パターン(オッズ比:1.891),リンパ節転移(オッズ比:3.304)はIIPの予後因子であった。また術前評価できなかったリンパ節転移をIIPの22.3%に認めた。あくまでCTでの判断であるが,肺葉切除術を施行したIIPの68%では縮小手術が不可能と考えられた。IIPによる肺切除後の早期NSCLC患者の予後は不良であり、これは癌のみの死亡や呼吸器関連死亡が多いことと関連している。縮小手術は常に可能とは限らないので,IIP症例に対する術式は慎重に選択する必要がある.肺切除の範囲にかかわらず、転移を見るためにリンパ節郭清を行う必要がある。

感想
間質性肺炎合併肺癌は20年以上前から議論されています。手術に関してもさまざまなエビデンスが日本から発信されており、今回も日常臨床に直結するデータです。間質性肺炎合併は放射線治療が難しいため、若いステージの場合どうしても手術が中心となります。多発であったりその後も出てくることが多い印象です。今回のIIP合併のIA/IBのの5年生存率は、IIPで58.1%/47.3%、あえて覚えるならば「Ⅰ期で切除できても5年生存は半分程度」とすべきでしょう。この判断に使用されるIIPの定義での通常型間質性肺炎の所見とは「胸膜直下、肺底部優位」「網状陰影」「蜂巣肺」「否定する所見がないこと」です[Raghu G AJRCCM2011 PMID:21471066]。縮小手術の是非については本文で述べられているようにJCOGでの臨床試験が行われています。間質性肺炎例については糖尿病や循環器合併症が多いので結局はケースバイケースで判断されていくと思います。間質性肺炎合併の議論が進まないのは間質性肺炎の診断と重症度さらに活動性が一様ではないこと、IIPの定期フォロー中に発見される場合リードタイムバイアスが大きく作用すること、生存に関して癌死亡だけでなく高齢、合併症などの要因が大きく絡むことが思いつきます。つまりランダム化試験など集団としての比較議論になじまないのではないかと感じています。