アテゾリズマブにbeyond PD効果はあるか

Atezolizumab Treatment Beyond Progression in Advanced NSCLC: Results From the Randomized, Phase III OAK Study.

Gandara DR et al.
J Thorac Oncol. 2018 Dec;13(12):1906-1918.
PMID: 30217492

Abs of abs
癌免疫療法は、画像上の進行が見られてもなお治療効果が継続するといった点で腫瘍学の概念を変える可能性がある。進行非小細胞肺癌におけるアテゾリズマブとドセタキセルの無作為第Ⅲ相試験(OAK)では、奏効率(ORR)または無増悪生存期間(PFS)の差がないものの、アテゾリズマブによる全生存期間(OS)の改善が見られた。今回はbeyond progression(TBP)におけるアテゾリズマブ治療におけるリスクベネフィットを検討した。OAK試験で一次有効性解析に含まれた850人の患者が評価された。アテゾリズマブは臨床的利益がなくなるまで継続されていた。ドセタキセルは、RECIST v1.1でPDまたは許容できない毒性が出るまで投与された。アテゾリズマブとのクロスオーバーは許容されなかった。奏効率、PFS、PD後生存期間、標的病変の変化および安全性を評価した。アテゾリズマブ群の患者で、innume modiied RECIST対RECIST v1.1で評価し、奏効率は16%対14%、PFSは4.2ヶ月対2.8ヶ月であった。PD後生存期間中央値は、アテゾリズマブ群患者でTBP継続の168人で12.7ヶ月[9.3-14.9]、プロトコル外療法に切り替えた94人で8.8ヶ月[6.0-12.1]であった。また後治療を受けていない70人では2.2ヶ月[1.9〜3.4]であった。アテゾリズマブTBP患者のうち、7%がPD後にレスポンスが得られ、49%が病勢安定であった。またアテゾリズマブによるTBPは安全性リスクの増加との関連は見られなかった。後ろ向き分析で限界があるものの、OAK試験におけるPD後の有効性および安全性が確認され、PDの時点で臨床的状態がよい患者においては、生存期間の改善とアテゾリズマブTBPが関連していることを示している。

感想
既治療例におけるアテゾリズマブ単剤とドセタキセル単剤を比較したOAK試験の大まかな結果は、片群425人が登録されPFS有意差なし、OS 13·8カ月対9·6ヶ月:ハザード比0.73、P=0.0003といったものでした。本来薬効をみるPFSに差が見られず、OSに差が出たことから患者背景の違いや後治療の影響の懸念も完全には否定できないところです。ただPFSのハザード比よりOSのハザード比が低い(良好)というのは免疫チェックポイント阻害薬(ICI)に共通する傾向で、そこにはICIを入れることでその時に利益がなくとも長期的には利益が得られることは確認できているとしか言いようがありません。したがってPD後にICIを継続することも正当化されるのではないか、というのが本論文の趣旨です。今回のbeyond PDの条件は、症状がない、PSの悪化がない、解剖学的に致命的な場所に悪化がない上で主治医が利益がありそうと判断した患者になります。つまり状態の良さそうな人だけを選んでいる可能性があり、直接beyondの効果ではない可能性があります。解析ではアテゾリズマブ群の約半数が継続(TBP)されていました。継続投与のサイクル中央値は3[1-34]でPD後の生存率は12ヶ月で40%(ドセタキセル31%)、18ヶ月で26%(同18%)でした。またドセタキセル群でPD後にICIを投与した群では、12ヶ月生存が70%、18ヶ月生存が42%でした。後治療別の生存曲線はFig4にまとめられています。データ上はTBPが一番よく見えますが、PD時に続けられるくらい安定した状態であったことがそもそも生存には好条件です。また継続そのものに意味があったかどうかは全く分かりません。つまりあえて継続しなくともこの結果であった可能性は否定できません。厳密にはこの時点でランダム化しないと真実はわかりません。ただあれほど良さそうに見えたEGFR-TKIのbeyond PD投与も、IMPRESS試験[Soria JC LancetOncol2015 PMID:26159065]ではほぼ否定されました。したがって印象や後ろ向き解析でのTBPの評価には慎重を要すると思います。そもそも免疫療法におけるPDの定義もまた難しく、いまだに論点になっています。画像上のPDが治療変更の目安でないとしたら、無症状の患者さんにとって何の意味も持ちません。免疫療法において、治療変更をしなければならない時はいつかという観点で考え直してみることが必要かもしれません。