アファチニブのlast resort

First-line afatinib for advanced EGFRm+ NSCLC: Analysis of long-term responders in the LUX-Lung 3, 6, and 7 trials.

Schuler M et al.
Lung Cancer. 2019 Jul;133:10-19
PMID: 31200814

Abs of abs.
LUX-Lung3と6試験でEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌において、初回治療としてのアファチニブ投与はプラチナ2剤と比較して無増悪生存期間の改善と奏効率の改善をもたらした。またLUX-Lung7試験においては、ゲフィチニブに比べて無増悪生存期間の延長と治療終了までの期間、奏効率の改善を示した。今回は事後解析として、これらの試験でのアファチニブへの長期奏効例(LTRs)を取り出し効果、安全性、自己申告による評価(PROs)について報告する。方法として未治療のEGFR遺伝子変異陽性stageⅢB/Ⅳの非小細胞肺癌でLUX-Lung3,6,7においてアファチニブ群に登録された患者を解析した。LTRsは3年以上アファチニブで治療した者と定義した。LUX-Lung3では10%(24/229)、LUX-Lung6で10%(23/239)、LUX-Lung7で12%(19/160)がアファチニブでのLTRsであった。試験間でベースライン特性は同じであったが、女性の割合が3と6では高く(LL3,6で92%と78%、全体64%)、Del19の割合も高かった(LL3,6で63-73%、全体49-58%)。各臨床試験(LL3,6,7)でのLTRsにおける治療期間中央値は50ヶ月、56ヶ月、42ヶ月であり、無増悪生存期間は49.5ヶ月、55.5ヶ月、42.2ヶ月であった。生存期間中央値は到達しなかった。また減量についても各試験で同様であり、3年後のPROsはわずかに改善したものの、ベースラインからほとんど変わらなかった。結論として、一連のLUX-Lung試験におけるアファチニブ治療患者の10-12%がLTRsであった。長期にわたるアファチニブ投与は毒性による用量調節と無関係になされており、安全性やPROsに与える影響もあまりなかった。

感想
臨床試験で初回治療としてアファチニブを投与した人で全体数は229+239+160=628人の後ろ向き解析となります。全体の1割の患者が3年以上アファチニブを継続し、無増悪生存期間は50ヶ月(4年)程度の集団として存在しています。アファチニブに限らず、ゲフィチニブ、エルロチニブでも長期投与を安定してできる人は存在します。しかしゲフィチニブを3年以上投与できた症例はわずか1%という報告があります[Gottschling S LungCancer2012 PMID:22483783]。TKIだけということではないですが、今やEGFR陽性では生存期間中央値が29.7ヶ月; 3年生存41.2%、5年生存21.5%となっています[Okamoto I LungCancer2018 PMID:29496250]。もっともこのデータはゲフィチニブ81.3%、エルロチニブ14.8%、 アファチニブ1.0%のデータで、しかもオシメルチニブがどのラインでも使われていないデータです。TKIの治療期間は平均17.9ヶ月で、beyondも含めて1年半は妥当なところです。それからすると倍の期間投与できるのは稀で、実臨床でも10%くらいというのは肌感覚としても納得できます。アファチニブの減量については各試験間で若干差があり、LL3では約半数のLTRsが20㎎に減量しています。開始用量にこだわるのではなく、毒性に応じて速やかに減量していくのはアファチニブにおいてもはやスタンダードであり、減量が重要であると強調されています。しかしLTRsは事前には予測できず、またこれらの患者群がT790Mが出ていたのかどうかも情報はありません。従ってアファチニブを使うことで長期生存の頻度は高まるものの、T790Mの出現頻度によって生存に影響を及ぼす可能性が残っており、どちらがいいのかはまだわかりません。今回とほぼ同じ患者を対象にした治療シークエンスの報告[Park K LungCancer2019 PMID:31097085]もされています。そこではアファチニブ→オシメルチニブがもっとも期待できると結論しています。話が少しそれますが、以前にニボルマブでの5年生存率が16%との報告がありました[Gettinger S JCO2018 PMID:29570421]。それからすると5年生存率はEGFR遺伝子変異陽性で20%、これとは別に免疫治療で長期利益を受ける群が20%いるのが現状となっています。つまり全体で見てもすでに2割程度が5年生存する時代であり、さらに上積みを目指す時代に生きているということになります。その中で今回のデータは、アファチニブでの治療開始が上積みとなる可能性が間接的に示唆されるデータになっていると思います。オシメルチニブもこれから実地のデータが出てきて、さまざまに議論されるでしょう。オシメルチニブのライバルとなりそうな薬は当面出てきそうにないので、アファチニブから開始し、オシメルチニブにつなげることがベストシークエンスの有力候補であること、それ自体で長期生存を目指すことが可能、といったところがアファチニブの生き残りのlast resortということになりそうです。