非扁平上皮癌の方がPD-L1発現とOSが相関しやすい?

Programmed Death-Ligand 1 Tumor Proportion Score and Overall Survival From First-Line Pembrolizumab in Patients With Nonsquamous Versus Squamous NSCLC.

Doroshow DB
J Thorac Oncol. 2021 Dec;16(12):2139-2143.
PMID:34455068

Abs of abs.
免疫チェックポイント阻害薬では、TPSが予後改善の予測マーカーであると確認されている。しかし扁平上皮癌と非扁平上皮癌の患者における組織別の予測についてはよくわかっていない。今回は扁平上皮癌と非扁平上皮癌の患者において、TPSのペムブロリズマブの初回治療後のOSの予測マーカーとしての違いを評価した。本研究は2015年10月から2019年4月の間に治療を受けた進行非小細胞肺癌患者を対象とした後ろ向き観察研究である。含まれる患者は、進行または転移性非小細胞肺癌であって、初回治療でペムブロリズマブ単剤を受け、PD-L1検査の結果が数値化されているものとした。EGFR、ALK、ROS1変異陽性は除外した。主要評価項目は、組織別あるいはPD-1発現レベル(低値は<50%、高値は≧50%)別のOSで、これはペムブロリズマブの初回治療開始からの期間とした。初回治療としてペムブロリズマブの投与を受けた非小細胞肺癌患者1460人のコホートで構成され、平均年齢は72歳であった。組織型は扁平上皮癌が28%、非扁平上皮癌が72%であった。PD-L1発現は、13%が低値、87%が高値であった。TPSや組織型別に見ても、年齢、性別、喫煙歴に特に意味のある差はなかった。性別と診断時の病期を調整した一般化ガンマモデルで検討すると、非扁平上皮では、TPSが高いことがOSの改善と有意に関連し、OSの中央値で8.4カ月の差があった(p<0.001)。一方、扁平上皮では、PD-L1発現レベルとOSとの間に関連性は見られなかった(p=0.283)。扁平上皮と非扁平上皮の間では、PD-L1に関連したOS中央値の増加分は有意に異なっていた(p=0.034)。今回の結果から初回治療でペムブロリズマブを投与されると、非扁平上皮非小細胞肺癌患者ではTPSの高さがOSと関連したが、扁平上皮非小細胞肺癌患者では関連が見られなかった。

感想
以前よりPD-L1染色と効果との相関はもやもやしていました。まず今回引用されている2つの研究を確認してみました。再治療におけるドセタキセル対ニボルマブの比較で、扁平上皮癌の試験[Brahmer J NEJM2015 PMID:26028407]と非扁平上皮癌の試験[Borghaei H NEJM2015 PMID:26412456]では、確かに非扁平上皮癌の方がOS、PFSともPD-L1が高発現の方が良さそうでした。それに比べて扁平上皮癌はあまり一定していません。ただしKeynote-024研究[Mok TSK LANCET2019 PMID:30955977]では、TPS=50%以上のサブセットにおいてOSの利益は扁平上皮癌に見られています(該当論文のFigS2)。今回の結論は「非扁平上皮癌の方がPD-L1と効果の相関関係をうまく説明できる」ですが、この理由については本文では考察されていません。思うにPD-L1は免疫チェックポイント阻害薬の利益を受ける必要条件ではあるけれど、それだけでなく第3あるいは第4の因子があるのでしょう。扁平上皮癌はICIの利益が(PD-L1に関係なく)幅広く受けられるのかもしれません。EGFR遺伝子変異の発見からもうすぐ20年になりますが、癌に関してはまだ単純なことしかわかっていないように思えます。
あまり気にするところではないのですが、統計で一般化ガンマモデルというのが使われています。今回直接のデータでは比例ハザード性の仮定が否定され、そのような場合の対処の一つなのでしょう。Rではflexsurvパッケージに実装されているようです(参考:https://moratoriamuo.hatenablog.com/entry/2021/04/05/220847)。