アファチニブ→オシメルチニブの治療シークエンス

Sequential afatinib and osimertinib in patients with EGFR mutation-positive NSCLC and acquired T790M: A global non-interventional study (UpSwinG).

Popat S et al.
Lung Cancer. 2021 Dec;162:9-15.
PMID:34649106.

Abs of abs.
EGFR-TKIは、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌(NSCLC)に対する標準治療である。しかし、最適な治療シークエンスはまだ確立していない。全生存期間は、初回治療後に可能な治療の選択肢によって左右される。アファチニブ耐性の主な機序としてT790Mの出現があり、その際には二次治療としてオシメルチニブが選択肢となる。今回の非介入国際試験(NCT04179890)では、日常診療において初回治療がアファチニブで、2次治療がオシメルチニブとなっているEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌(Del19/L858R)で連続した患者(n=191、すべてT790M陽性)を対象として調査した。主要目的は、アファチニブ開始からオシメルチニブを含めた治療失敗までの期間(TTF)で、副次項目として、全生存期間と奏効率を設定した。アファチニブ投与開始時の年齢中央値(範囲)は62歳(34~88歳)、患者の55%が女性で、67%がアジア人であった。PS(0/1/≧2)は31%/57%/12%であった。オシメルチニブ開始時のPS(0/1/≧2)は25%/61%/14%で、14%に脳転移が存在し、オシメルチニブ終了時には29%に上昇した。生検検体(固体/液体)は、アファチニブ投与開始時に86%/3%、オシメルチニブ投与開始時に54%/33%であった。TTF中央値は27.7カ月[24.0~30.2]、OS中央値は36.5カ月[32.9~41.8]であった。アファチニブとオシメルチニブの奏効率は、それぞれ74%と45%であった。TTF、OS、ORRは、サブグループ間で同じであった。今回の研究から、EGFR遺伝子変異陽性でT790M陽性の患者に対してアファチニブに引き続きオシメルチニブ投与することで効果を示した。この効果はPSが悪い患者、脳転移のある患者を含むすべてのサブグループで観察された。PSおよび脳転移の発生率は、アファチニブ投与前後で安定していた。

感想
初回オシメルチニブが保険適応になる前かつ、T790M変異でオシメルチニブが使用できたという特別な環境下でのグローバルデータです。初回アファチニブが終わった後、T790Mが出てさらにオシメルチニブ投与ができたという考え方によってはかなり特殊な集団であることに留意すべきです。もし「治療シークエンス」というものが実在するのであれば、今後も検討されていく課題ではあります。これまでTKIについて治療シークエンスの存在は確認されていません。今回確認された興味深い現象としては、この治療シークエンスがアジア人に特に有効かもしれないという点です。主目的ではないため補遺にされていますが、TTF、OSともアジア人が非アジア人に比べて良好であり、見かけ上KM曲線もかなり開いています。FLAURA試験のサブ解析で有名になった日本人ではあまりオシメルチニブの効果が見えなかったことがもし真実ならば、アジア人ではむしろアファチニブの利益が大きい可能性もあります。ただしこの事象はいろいろな考え方ができるので一概には言えません。私個人としてはアファチニブの手堅い効果と肺臓炎の少なさから、オシメルチニブの使用制限(2次治療以降ではT790M陽性例に限る)さえなければアファチニブから入りたいと思っています。いつも言っていますが私たちはエビデンスの奴隷ですので、オシメルチニブ一択からなかなか抜け出せないのですが、目の前のこの患者さんに本当にそれでよいのかという視点は常に持っておきたいところです。