KEYNOTE-024 最新の生存データ

Updated Analysis of KEYNOTE-024: Pembrolizumab Versus Platinum-Based Chemotherapy for Advanced Non-Small-Cell Lung Cancer With PD-L1 Tumor Proportion Score of 50% or Greater.

Reck M et al.
J Clin Oncol. 2019 Mar 1;37(7):537-546.
PMID: 30620668

Abs of abs
ランダム化オープンラベル第3相試験であるKEYNOTE024試験では、PD-L1染色50%以上陽性の未治療進行非小細胞肺癌(NSCLC)患者において、プラチナベースの化学療法と比較してペムブロリズマブが無増悪生存期間および全生存期間を有意に改善することが示された。今回は化学療法からペンブロリズマブへのクロスオーバーによって引き起こされるバイアスを調整した解析と、最新の全生存期間を報告する。患者は3週間ごとにペムブロリズマブ200 mg(最大2年間まで)、または研究者が選択したプラチナベースの化学療法(4〜6サイクル)を行うかに無作為に割り付けられた。化学療法に割り当てられた患者は、適格基準を満たせばペムブロリズマブにクロスオーバーする可能性がある。プライマリーエンドポイントは無増悪生存期間で、全生存期間は重要な副次項目であった。クロスオーバー調整は、単純化された2段階法、rank preserving structural failure time(RPSFT)、および打ち切りに関する逆重み付けで行われた。355人の患者が無作為に割り付けられた(ペムブロリズマブ、n=154; 化学療法、n=151)。データカットオフ時(追跡期間中央値、25.2ヶ月)、ペンブロリズマブ群で73人、化学療法で96人が死亡していた。生存期間中央値は、ペムブロリズマブで30.0ヶ月[18.3ヶ月-NA]、化学療法で14.2ヶ月[9.8-19.0]であった(ハザード比0.63[0.47-0.86])。化学療法に割り付けられていた患者のうち82人が、ペムブロリズマブにクロスオーバーした。二段階法で調整した場合、ハザード比が0.49[0.34-0.69]であった。その他の2法の結果は類似していた。治療関連のグレード3-5の有害事象は、化学療法と比較してペムブロリズマブの方が低頻度であった(31.2%対53.3%)。長期の追跡調査から、EGFR/ALK変異のない未治療進行非小細胞肺癌患者において、初回治療としてのペムブロリズマブ単剤療法は、コントロールアームからのペムブロリズマブへのクロスオーバーがあっても化学療法に対する生存利益を維持している。

感想
KEYNOTE024試験は最初のNEJMの報告[Reck M NEJM2016 PMID:27718847]では、OSハザード比0.60[0.41-0.89]でした。今回ほぼそれを維持してペムブロリズマブ群の生存期間中央値が30ヶ月と報告されました。約2年半であり、これはタグリッソ出現前のEGFR遺伝子変異陽性にも匹敵する成果です。クロスオーバーを許した化学療法でも2年生存が34.5%と、これまでの化学療法の成績に比べると長足の進歩と言えます。クロスオーバーを許容するかどうかは一種の賭けであったと思いますが、合うものを最初に投与した方が生存を延ばすことが確認されました。考えるとすればクロスオーバー集団の成績になります。これも化学療法後82/151=54.3%にペムブロリズマブが入ったものを含めた解析でハザード比が0.63であり、この差が無くなってしまうことは今後なさそうです。またクロスオーバー群のペムブロリズマブの奏効率は20.7%と再治療での成績として極端に悪かったわけでもありません。唯一気になるとすれば、KEYNOTE042試験(PD-L1>=1%の初回治療のペムブロリズマブ対化学療法)における、PD-L1>=50%でのサブセット解析で、全生存期間が交差していることくらいでしょうか。背景の違いなど様々言われていますが、原因ははっきりしません。今回のKEYNOTE024試験はPD-L1>=50%の集団の結果を主に見に行っているわけですから、この試験の結果の方が重いのは言うまでもありません。
またクロスオーバーを調節した解析法(RPSFT)についてですが、この解析法の原理として、治療薬の効果が初回に入れても再治療で入れても変わらないという仮定を置いています(https://www.phusewiki.org/docs/Germany%202015%20SDE%20Presentations/Getting-closer-to-the-truth-Crossover.pdf)。Rパッケージはそのまま”rpsftm”があり、データがあれば解析自体は可能です。しかし本試験においてこの仮定は正しいのでしょうか?少し気になります。
とにかく初回PD-L1>=50%以上に対しては、化学療法を加えるかどうかは決着していませんが、ペムブロリズマブを含めた治療で開始すべきことは間違いないところです。さらに前述のKEYNOTE042試験の結果があり、PD-L1>=1%ならとにかくペムブロリズマブを初めから入れることを考える方向に誘導されているように思います。エビデンスでは確かにそうなのですが、どこかアートのなさを感じるのは私だけでしょうか。