肺炎のような粘液性肺腺癌の元は孤発型なのか?

Stepwise progression of invasive mucinous adenocarcinoma based on radiological and biological characteristics.

Goto E et al.
Lung Cancer. 2023 Oct;184:
PMID:37619407.

Abs of abs.
浸潤性粘液性肺腺癌(IMA)は、独特の画像所見と病理学的特徴を有する。IMAは孤立型と肺炎型に分類されるが、これらが生物学的に同一であるかどうかは不明である。2010年1月から2018年12月までに肺切除を受けたIMA患者70例(孤立型[n=38]および肺炎型[n=32])について、単一施設での後ろ向き解析を行い、2つのタイプの臨床的および生物学的特徴を比較した。EGFR、KRAS、BRAF、GNAS、ERBB2、TP53、NRG1、METなどの遺伝子変異の頻度は変わらなかった。免疫染色では、MUC1の発現は肺炎型で有意に多く(5.0%対20.0%、p=0.01)、孤立型ではびまん性にMUC6陽性(39.0%対13.0%、p=0.02)であった。さらに、孤立型をGGOのあるものとないものに分類し、肺炎型をcrazy-paving appearance(CPA)のあるものとないものに分類し、それぞれの手術成績を評価した。GGOを伴う孤発型、GGOを伴わない孤発型、CPAを伴わない肺炎型、CPAを伴う肺炎型の5年生存率および無再発生存率は、それぞれ95.8%/86.6%、64.3%/70.7%、74.6%/68.9%、50.0%/28.6%であった。今回の検討では遺伝子変異に差はないものの、ムチンの発現パターンは異なっていた。手術成績は孤立型ではGGOの有無により、肺性型ではCPAの有無により異なっていた。これらのことから孤立型IMAから肺炎型IMAへ段階的に進行することが示唆された。

感想
病理標本で同じmucinous adenoca.とされるものでも、結節に見えるものから肺炎のように見えるものまで画像は幅広いです。確かにこれらが同一のものなのかどうかは興味あるところです。今回はこれらを孤発性±GGOと肺炎型±CPAに分け、その手術成績を分類しています。これらの予後は孤発性+GGO>肺炎型+CPAでした。この孤発性+GGOのGGOが何をみているかですが、残っている肺胞を見ており、それが粘液で満たされるとGGOのない孤発性になると推察されています。また肺炎型のCPAは、粘液で充満した肺胞と腫瘍細胞の間質浸潤と考えられています(Fig4で非常にわかりやすく図解されています)。GGNはまだ腫瘍周囲に空間が残っている段階で、CPAは粘液や腫瘍がより周囲に拡大した状況となり、これらは時間的な差を見ていると考えられます。EGFRなどの遺伝子変異の頻度が変わらないことと合わせると全く異なる起源を持つとは考えにくいとの意見に同意します。これら粘液腺癌はEGFRがまれで、KRASが多いと報告されており勉強になりました。今回の検討でも孤立型では23人(61%)、肺炎型では24人(75%)にKRAS変異が見つかっており非常に強い関与が疑われます。