EGFR遺伝子変異陽性、手術追加の意義は?

Thoracic surgery improved overall survival in patients with stage IIIB-IV epidermal growth factor receptor-mutant lung adenocarcinoma who received and responded to tyrosine kinase inhibitor treatment.

Chien YN et al.
Lung Cancer. 2021 Dec;162:29-35.
PMID:34662782.

Abs of abs.
切除不能ⅢB/Ⅳ期のEGFR遺伝子変異陽性肺腺癌において、EGFR-TKI治療で効果があり胸部手術を行ったケースでの大規模前向き無作為化試験は存在しない。今回はこのような場合について傾向スコアマッチをさせた人口ベース・コホート研究で検討した。前述のような切除不能ⅢB/Ⅳ期のEGFR遺伝子変異陽性肺腺癌を対象とし、治療方法によって2群に分類し比較した。ケース群は、EGFR-TKI治療を受け奏効した後に胸部手術を受けた患者、比較群は腫瘍進行までEGFR-TKI治療のみを受けた患者である。両群を1:4でマッチングした。最終的に1395人(ケース群279人、比較群1116人)が解析対象となった。多変量Cox回帰においてEGFR-TKI使用で奏効し胸部手術うけた群の、EGFR-TKI治療のみ群に対する調整ハザード比は0.445[0.351-0.564]であった。今回の検討では、EGFR-TKI治療を受け奏効した切除不能ⅢB/Ⅳ期のEGFR遺伝子変異陽性肺腺癌を胸部手術をすることにより全生存期間の延長が見られていた。

感想
台湾からの報告で、どうしてもバイアスが避けられない研究ですが、今後あり得る方向性と思います。現在EGFR遺伝子変異陽性に関しては、術後も含めたより強力なTKIと新規、既存問わず薬剤の組み合わせによる耐性克服の方向で進んでいます。古典的ではありますが、奏功した場合の原発切除が今回の検討になります。理屈としては、原発巣に耐性細胞が残っていて、それが全身転移の元となるという考え方です。今回はレトロなので仕方ないですが、循環がん細胞や微小環境が議論される中、仮に前向きで確かめようとすると設定がかなり難しく、おそらく実現不可能です。今回高齢者の方が、手術の利益が大きかったとのことで、いろいろ考察されていますが今一つ納得できない点です。またDel19かL858Rについても情報がなく、ひょっとしたらその差かも知れません。今回の手術して得られる一番の利益は「患者の安心感」ではないかとも思ったりします。私はエビデンスのないlate-lineの抗がん剤治療を行っている身であり、「患者の安心感」を決して笑うことはできない効果であると思っています。