オシメルチニブとアファチニブ交替療法、耐性機序が興味深い

Alternating Therapy With Osimertinib and Afatinib Blockades EGFR Secondary Mutation in EGFR-Mutant Lung Cancer: A Single-Arm Phase II Trial.

Yonesaka K et al.
Clin Lung Cancer. 2023 Sep;24(6):519-527.
PMID:37344331.

Abs of abs.
EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌においてEGFR-TKIに対する耐性出現により、治療選択肢が限られてしまう。前臨床モデルでは、オシメルチニブまたはアファチニブ単独投与によりEGFR2次変異持つ薬剤耐性クローンが誘導されるが、併用によりこれらの変異の出現が阻止することができる。今回はEGFR遺伝子変異陽性肺癌を対象に、オシメルチニブとアファチニブの交替療法を単アーム第Ⅱ相試験で検討した。活性型EGFR遺伝子変異を有するIV期非小細胞肺癌の未治療患者を登録し、オシメルチニブ(80mg/日)とアファチニブ(20mg/日)を交互に8週間毎に投与した。治療前後で循環腫瘍DNAを用いてゲノム解析を行った。46人が登録され、無増悪生存期間中央値は20.2ヵ月、奏効率は69.6%、生存期間中央値は未到達であった。耐性獲得後の血漿26検体のうち、3検体でMET遺伝子コピー数の増幅が認められ、1検体でBRAF遺伝子変異が認められた。EGFR遺伝子の2次変異は検出されなかった。EGFR遺伝子変異を有する未治療の進行非小細胞肺癌患者において、本治療法はオシメルチニブ単独療法と効果において有意差は見られなかった。サンプルサイズは少ないものの、この治療法で薬剤耐性の引き金となるEGFR遺伝子の2次変異を防ぐ可能性はあるかもしれない。前に進めるためには更なる研究が必要である。

感想
オシメルチニブ単剤での耐性機序は、報告により差異がありますが、代表的なものを見ると、EGFR2次性変異(C797Sなど)が10%程度、METやHER2、BRAFなど標的治療があるものが10%、形質転換が15%、そのほか不明が占めています[Leonetti A Br J Cancer2019 PMID:31564718]。第1,2世代TKIの半数がT790M変異により耐性獲得するのと比べて、オシメルチニブはEGFR受容体と不可逆的に結合するため、バイパス経路での耐性が多くなると考えられています。今回の研究で最も重要な点は、現在のところオシメルチニブ単剤とアファチニブとの交替療法で差はないが、獲得耐性のバリエーションが異なるので今後の分子標的治療の開発方向一つで意味が変わってくるということです。化学療法とTKIのサンドイッチ療法(JCOG1404/WJOG8214L)も主要エンドポイントが達成できず残念でしたが、これも獲得耐性のバリエーションがどうなっているのか興味あるところです。
EGFR遺伝子の2次変異に対する治療が進むのであれば、オシメルチニブ単剤の方向がよいでしょうが、今後バイパス経路の解明および治療が進歩するなら交替療法もありということになるかも知れません。またタグリッソ80㎎錠が18540円、ジオトリフ20㎎錠は4653円ですので、同じ生存期間であればかなり医療費の節約になります。また遺伝子変異別のPFSもクロスしており差が見られません。つまりオシメルチニブでL858Rが今一つという声にも答えることができます。気になる有害事象は肺臓炎が5例10.9%(うちG3以上が3例6.5%)とオシメルチニブ単剤に比べて改善されておらず、この点は問題です。現在この治療は一般化できませんが、耐性機序としては大いに示唆を与える研究であると思います。