オシメルチニブ初回治療におけるPD形式

Patterns of progression on first line osimertinib in patients with EGFR mutation-positive advanced non-small cell lung cancer (NSCLC): A Swiss cohort study.

Schuler A
Lung Cancer. 2024 Jan Epub 2023 Nov 22.
PMID:38043395.

Abs of abs.
オシメルチニブは第3世代のEGFR-TKIであり、初回治療として承認されている。しかし、治療抵抗性は必然的に出現し、オリゴ転移または全身播種として現れる。オシメルチニブ初回治療におけるオリゴ転移の発生率は不明である。今回はスイスの13施設でオシメルチニブの初回治療を受けた患者を後ろ向き解析した。なおオリゴ転移は5病変以下の発生率としアウトカムを解析した。148例の年齢中央値は68.2歳(38.0-93.3)であった。女性は62%、PS≦1が83%、非喫煙者が59%、19DELが57%、L858Rが37%であった。77%がオリゴ転移であった。全生存期間は51.6ヵ月[38.4-65.0]であった。PFSは、common mutationで19.2ヵ月[14.3-23.5]、uncommonで8.7ヵ月[2.8-15.6]であった。オリゴ転移は全身播種と比較して、治療失敗までの期間が有意に長く、OSも長かった(22.9ヵ月対10.8ヵ月、p<0.001、51.6ヵ月対26.4ヵ月、p=0.004)。PDの最も多い臓器部位は肺(62%)、脳(30%)、リンパ節(30%)、骨(27%)、胸膜(27%)であった。オリゴ転移26人(45%)が局所療法を受けた。局所療法を受けたオリゴ転移のOSは60.0ヵ月[51.6-NA]であったのに対し、局所療法を受けなかった患者では51.4ヵ月[38.4-65.3]であった(p=0.43)。本検討からオシメルチニブ初回治療のオリゴ転移によるPDは77%であった。全身播種に比べてOSが有意に良好であった(51.6ヵ月 vs. 26.4ヵ月)。局所療法を受けたオリゴ転移はOS中央値が最も長かった(60.0ヵ月)。

感想
最近オリゴ転移の話題はなくなってきました。オリゴ転移の方が病勢進行がゆっくりなので予後が良いのは当然にも思えます。以前の記事では、T790M陽性例へのオシメルチニブでオリゴ転移が多そうということを取り上げました。大事なのは、それに対して局所療法(切除、放射線など)を行って予後改善に結びつくかどうかです。今回のオリゴ転移での検討は中央値こそ60ヶ月対51.4ヶ月と差があり、強調された書き方がされていますが、生存曲線(Fig3)を見るとあまり差がつくようには見えません。P値も0.43でした。今回のデータからもオリゴ転移に対する局所療法は、検討してもよいというレベルであり、必須とは言えません。さて興味あるのはオリゴ転移がどこに出やすい、出にくいかです。表を少し抜粋してみました。オリゴ転移となりにくい場所は胸膜、脳、肝でした。日常臨床に応用すると、オシメルチニブを服用している患者のフォローはこの場所に気をつけて、もし出てこれば他の場所も疑っていくということになります。