オシメルチニブPD後は早々に切り替えるべき

The Whole Picture of First-Line Osimertinib for EGFR Mutation-Positive Advanced NSCLC: Real-World Efficacy, Safety, Progression Pattern, and Posttreatment Therapy (Reiwa Study).

Watanabe K et al.
JTO Clin Res Rep. 2024 Sep 7;5(11)
PMID:39416709

Abs of abs.
オシメルチニブはEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌の初回治療に使われている。 しかし実地における有効性と安全性はまだ十分に解明されておらず、投与後の進行パターンや最適な次治療も不明である。 今回は多施設共同前向き観察研究である。 2018年9月から2020年8月までにオシメルチニブの初回投与を開始した患者を登録し、2022年8月まで追跡した。計583例の患者がオシメルチニブの投与を受けていた。 無増悪生存期間および全生存期間の中央値は、それぞれ20.0ヵ月[17.6-21.7]および41.0ヵ月[37.1-44.1]であった。 グレード3以上の有害事象は136例(23.3%)に認められた。 進行パターンは、枢神経系のみ、オリゴ進行、多臓器に分類され、それぞれ37例(10.8%)、156例(45.4%)、151例(43.9%)であった。 進行時の患者の状態は、195例(56.7%)で無症状であった。 オシメルチニブは、進行後も163例(47.4%)で継続投与された。 進行時に安定していた集団(n=247)において、beyond-PDでオシメルチニブを継続した患者(n=124)の進行後の生存期間は13.3ヵ月[10.9-16.4]、オシメルチニブを中止した患者(n=123)では24.1ヵ月[17.7-34.0]であった(ハザード比2.01[1.38-2.91]、p=0.0002)。 プラチナ製剤+ペメトレキセド併用療法がオシメルチニブ投与後に最も全生存期間を延長したレジメンであった。オシメルチニブ初回治療は、主たる臨床試験で報告されたものと同等の良好な有効性であった。 しかしオシメルチニブは進行がみられた場合には中止したほうがよいだろう。

感想
オシメルチニブも時間がたってきており、実臨床でのまとめも多く出てきています。今回は主に関東のグループが行った研究です。FLAURA試験で懸念されたL858Rでの有用性や、肺臓炎などの情報について実地で確認されています。比較試験ではないので確定的なことは言えませんが、L858RでPFS16.9ヵ月、すべてのグレードの肺臓炎が12.9%と、グローバルに比べて肺臓炎は高率ですが、死亡はなく類似報告とも一致し、L858Rについても効果が確認されました。資料としても優れていますが、細かい数字はさておき一番興味深いのは、beyond-PDの意義があるかどうかを論じている点です。Figure2にその貴重な報告があります。脳転移のみのPDで状態が安定している患者であっても、多臓器転移が出現しても安定している患者であってもbeyondで続けるのは良くなさそうです。当然ランダム化されていませんので、選択バイアスは否めません。つまり状態がよければ本来治療変更のはずだが、変えられない何らかの別の要因があった、ということです。後治療についても詳しく書かれており、いわゆるABPCの奏効率は36.1%、PFSは10.0ヵ月、OSは18.1ヵ月、プラチナ+ペメトレキセドのそれは、29.2%、6.2ヵ月、28.8ヵ月でした。今後アミバンタマブの登場によりこのあたりのデータは取りにくくなります。またプラチナ+ペメトレキセドの有用性が示唆されたのも心強いことです。これらを併用したFLAURA2の結果が実地でも期待できそうです。
実は私も実地でオシメルチニブPD後の継続投与にあまりメリットが感じられないと思っていました。効かなくなると急速に悪くなっていく人も複数経験しています。この辺りはゲフィチニブやアファチニブの印象と少し違うような気がしていました。今回の研究の結論は、その感覚と非常に合うので取り上げました。これからは自信を持って、オシメルチニブPDであれば早々に切り替えを考える方針で行きたいと思います。