ニボルマブ+イピリムマブ+抗がん剤 9LA試験

First-line nivolumab plus ipilimumab combined with two cycles of chemotherapy in patients with non-small-cell lung cancer (CheckMate 9LA): an international, randomised,open-label, phase 3 trial.

Paz-Ares L et al.
Lancet Oncol. 2021 Feb;22(2):198-211.
PMID:33476593.

Abs of abs.
初回治療としてのニボルマブ+イピリムマブ併用療法は、進行非小細胞肺癌(NSCLC)患者の全生存期間の改善を示した。今回はこの併用にさらに2サイクル限定の化学療法を追加することで、臨床効果がさらに高まるかどうかを検討した。
ランダム化オープンラベル第3相試験は、19カ国の103の病院で行われた。対象は未治療IV期/再発の非小細胞肺癌でPS0-1である18歳以上の患者である。患者は、ニボルマブ(360mg 3週間毎)とイピリムマブ(1mg/kg 6週間毎)を併用し、組織型に応じたプラチナ2剤を行う群(3週間ごとに2サイクル、試験群)と、化学療法のみを行う群(3週間ごとに4サイクル、対照群)に、1対1で無作為に割り付けられた。ランダム化は、組織型、性別、PD-L1発現によって層別化された。プライマリーエンドポイントは、全生存期間であった。安全性については、治療を受けたすべての患者を対象に分析した。今回の結果は、事前計画された中間解析(本試験が主要評価項目を達成した時点)と、探索的な長期追跡結果である。本試験は登録終了したが、現在も継続中である。
2017年8月24日から2019年1月30日の間に、1150名の患者が登録され、719名(62-5%)がニボルマブ+イピリムマブに2サイクルの化学療法を併用する群(n=361 [50%])または4サイクルの化学療法単独群(n=358 [50%])に割り付けられた。事前に計画された中間解析(追跡期間中央値9-7カ月[IQR 6-4-12-8])において、全生存期間は、実験群が対照群よりも有意に長かった(中央値14.1カ月[13.2-16.2]対10-7カ月[9.5-12.4]、ハザード比0.69[0.55-0.87]、p=0.00065)。観察期間の中央値が3.5カ月長くなると(中央値13~2カ月[IQR 6~4~17~0])、全生存期間の中央値は実験群で15.6カ月だったのに対し、対照群では10.9カ月になった(HR 0.66[0.55~0.80])。グレード3,4の有害事象で最も多かったのは、好中球減少(実験群24例[7%]、対照群32例[9%])、貧血(21例[6%]、50例[14%])、下痢(14例[4%]、2例[1%])、リパーゼ増加(22例[6%]、3例[1%])、無気力(3例[1%]、8例[2%])であった。グレードを問わず,治療関連の重篤な有害事象は,試験群では106例(30%),対照群では62例(18%)に発生した.試験群に7例(2%)の死亡(急性腎不全、下痢、肝障害、肝炎、肺炎、急性腎不全を伴う敗血症、血小板減少症、各1例)と、対照群の6例(2%)の死亡(貧血、発熱性好中球減少症、汎血球減少症、肺由来の敗血症、呼吸不全、敗血症、各1例)が見られた。
本試験からニボルマブとイピリムマブに2サイクルの化学療法を併用することで、化学療法単独に比べて全生存期間が有意に改善し、良好なリスク・ベネフィット・プロファイルが得られた。これらのデータは、進行非小細胞肺癌患者の新たな初回治療の選択肢となりうることを示唆する。

感想
Checkmate227試験[Lupinacci L NEJM2019 PMID:31562796]で、イピリムマブ+ニボルマブと化学療法の比較を行いました。その結果全生存期間でイピリムマブ+ニボルマブが良い傾向にあったものの、PD-L1=1%以上のグループでは6ヶ月くらいまで化学療法群が上を行く結果となっていました。今回の試験は、その交差部分を解決できないかと最初の部分に化学療法を上乗せした試験です。Fig2が主な結果ですが、時々試験治療群と引っ付きながらも最終的には上をいっているというのがAです。少し追跡期間を上乗せした図がBです。細かい話ですが、Bの方がいわゆるtailがきれいに開いておりtail plateauを期待させるグラフになっています。スケールも若干違います。長期効果に期待するメーカーとしてはこちらの図を見てほしいのでしょうが、本来この図はappendixに載せるべきではないかと思います。エビデンスという観点からすると事前設定された事柄には忠実であるべきで、この試験を紹介するのにどちらの図を使うかは、エビデンスをどれだけ重視しているかの試金石かも知れません。
さてサブグループ解析を見ると75歳以上、非喫煙者は点推定値で抗がん剤治療が良好になっています。これらの点も従来の免疫療法の効果が高い集団について言われてきた通りで、全員に良いわけではないことが伺われます。PD-L1statusについては、どこで切っても同じようであり、イピリムマブが絡む場合、もはやPD-L1は頼りになりません。有害事象については、皮疹、甲状腺機能低下が試験群に多く見られ、全体としても試験群に多くなっています。また本来知りたいのは免疫2剤+抗がん剤 vs ICI2剤またはPD-(L)1阻害薬+抗がん剤であり、今回の結果はあくまでも1回戦のような印象です。ガイドラインも毎年厚くなるように治療選択にはますます知識が求められ、片手間では追い付くのが難しくなってきました。今後は実地臨床での集積により、より適した集団を見分けられることが期待されます。