免疫療法における奏効率、PFSはOSのサロゲートになるか?

Correlations of response rate and progression-free survival with overall survival in immunotherapy trials for metastatic non-small-cell lung cancer: an FDA pooled analysis.

Goulart BHL et al.
Lancet Oncol. 2024 Apr;25(4):455-462.
PMID:38458207.

Abs of abs.
画像評価は免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の治療効果を十分に反映していない可能性がある。今回は進行非小細胞肺癌に対するICIの臨床試験における奏効率・無増悪生存期間と全生存期間との相関を評価した。奏効率および無増悪生存期間と全生存期間との関係を、試験全体または個別患者で相関を検討した。2016年6月24日から2021年3月16日までにFDAに提出された初回無作為化試験のプール解析を行った。対象は、少なくとも1つのICIを試験群とし、対照群における化学療法と比較したものである。試験全体では、重み付け線形回帰を用いて決定係数(R2)を算出した。個別患者では、Cox比例ハザードモデルを用いて、RECIST1.1に従って奏効群と非奏効群の全生存期間を比較した。9285人からなる13の試験で、ICI単独・化学療法との併用と化学療法単独とが比較討された。試験全体でのR2は、奏効率と全生存期間との相関で0.61[0.32-0.84]、無増悪生存期間と全生存期間との相関で0.70[0.40-0.89]であった。PD-L1発現によるサブグループでは、相関は弱い~中等度であり、ICI単独または化学療法との併用の試験で一貫していた。個別患者では、奏効者は非奏効者よりも全生存期間が長かった(ハザード比0.28[0.26-0.30])。奏効群では、試験治療群の方が対照群よりも全生存期間が長かった(HR0.54 [0.48-0.61])。奏効率および無増悪生存期間と全生存期間との相関は、このプール解析では中等度であった。この所見は進行非小細胞肺癌に対するICIの初回ランダム化試験において、全生存期間の成熟を待っての解析をルーチンで行うことを支持するものである。

感想
10年ほど前にPFSや奏効率が、OSの代替マーカーとなるかどうかがしきりに議論されました。特に治療ラインのPFSを足していくとOSになるとの理屈から、PFSでも良いのではないかという話もありました。結局結論は出ていませんが、時間コストや後治療の差などの問題があり、肺癌でもOS評価はすでに難しくなっています。今回の解析でやっていることは前の報告と変わらず、泡プロット、つまり(Log化した)各指標をXYに取り回帰直線を引いただけです。今回は表2にPD-L1発現別で解析されており、注目すべき点です。ICI+化学療法対化学療法で、PD-L1<1%では、R2値が中等度の相関を示す(RRとOS0.73、PFSとOS0.57)のに対して、PD-L150%以上では(RRとOS0.03、PFSとOS0.29)とほとんど相関がなくなってしまう点が面白いと思います。一方ICI単独と化学療法では、弱いながらも相関がありそうに見えます。つまり総合して見てしまうと弱~中等度の相関という面白くない結果になりますが。PD-L1別に見ると少し違うということです。特にPD-L1高発現においては奏効やPFSはあくまでも参考に過ぎないということです。この理由としては、試験数が少ないことに注意した上で、RECIST基準に合わない、治療のクロスオーバー、beyondPD投与があげられます。とは言え奏効例がより長期生存の可能性があることも事実であり、特にICIでの奏効例は期待できそうです。PD-L1陰性例について、化学療法と同じ傾向をしめすとなると、本当にICI上乗せ効果があるのかが気にかかります。このセグメントに対しての抗CTLA-4を含むレジメンの売り込みは激しいように思いますが、トータルで見るとデータの整合性が今一つで確信が持てません。ICIの臨床試験の評価は、じっくりとOSを見ましょうというのが主たる結論ですが、薬剤開発上良い薬は急いでほしいところもあります。安全性がある程度確保されているのであれば多少勇み足でも承認して、後の報告次第を厳しく求め、取り消しも辞さないという行政を期待します。日本に比べFDAはそれに近いように見えますが、違うでしょうか?