SMARCA4欠損未分化腫瘍と免疫療法の効果

Thoracic SMARCA4-deficient undifferentiated tumor: A clinicopathological and prognostic analysis of 35 cases and immunotherapy efficacy.

Zhou P et al.
Lung Cancer. 2024 Mar;189
PMID:38306886.

Abs of abs.
胸部SMARCA4欠損未分化腫瘍(SMARCA4-UT)は、2021年WHO第5版分類で臨床病理学的に独立したものとされた。この腫瘍は、特に小さな生検での診断が困難である。2017年1月から2022年12月の間に、35例の胸部SMARCA4-UTを同定した。本研究では、胸部SMARCA4-UTの臨床病理学的特徴、予後、免疫療法の有効性について検討した。35例すべてが男性で、88.6%が喫煙者であった。発生部位は左上葉(25.7%)と縦隔(20.0%)が多かった。患者の17.1%が外科治療を受けた。患者の30.4%がⅢ期、69.6%がIV期であった。充実組織(100%)、ラブロイド形態(51.4%)、壊死(42.9%)がよく見られた。免疫染色では、ほとんどの患者でCD34とシナプトフィジンが陽性であった(それぞれ76.9%と65.2%)。患者は予後不良であった。免疫療法を受けた患者は受けなかった患者よりもOSとPFSが良好であった(それぞれp=0.007とp=0.02)。免疫療法の有効性を評価した患者は5人で、そのうち4人はPD-L1陰性であった。症例1~4はTIL数が20~1000/HPFであった。症例5はTIL数が5-10/HPFであった。症例4と5ではSMARCA4の変異が確認され、TMBはそれぞれ5.98と5.03変異/Mbであった。症例1はCR、症例2〜4はPR、症例5はPDであった。免疫療法を受けた5人の患者はすべて生存しており、OSは10.7カ月から33.6カ月であった。胸部SMARCA4-UTは悪性度の高い臨床経過を示し、壊死やラブロイド形態を併存する充実組織を示し、CD34およびシナプトフィジン高発現であった。一部の胸部SMARCA4-UTは免疫療法に対する反応性と関連しているようであり、より大規模な検証を必要とする。

感想
SMARCA4欠損未分化癌は、非小細胞肺癌の1割にあるとされており、予後不良とされています。遺伝子の転写調節に関与しがん抑制遺伝子としての性質を持ちます。治療に関してはほとんどわかっていませんが、一部免疫チェックポイント阻害薬の有効性が報告されています。若い喫煙男性に多いといった特徴以外に、組織ではCD34とシナプトフィジンが陽性であることも疑うきっかけとなり得ます。LCNECとの鑑別が問題となりますが、SMARCA4では神経内分泌マーカーが出ていないことが助けになります。治療データとしてはまだ乏しく判断が難しいですがFig3を見る限り、免疫チェックポイント阻害薬に関しては有効性が期待できそうです。免疫療法については画像も示されており、CR例もありました。SMARCA4についていろいろ読んでいたところ、先月発行の肺癌学会誌にもペムブロリズマブが全く効かなかった症例のケースレポートが掲載されています。PD-L1=100%であったとのことで、今回の論文を読んでいたら効果を確信してしまいそうです。改めて少数例ではなく、多数の症例を集めて解析することの重要性を感じます。