オシメルチニブ+ベバシズマブは喫煙者向き?

Randomized Phase 2 Study of Osimertinib Plus Bevacizumab Versus Osimertinib for Untreated Patients With Nonsquamous NSCLC Harboring EGFR Mutations: WJOG9717L Study.

Kenmotsu H et al.
J Thorac Oncol.2022 Sep;17(9):1098-1108.
PMID:35636696.

Abs of abs.
EGFR遺伝子変異陽性の未治療非扁平上皮癌患者に対するオシメルチニブとベバシズマブの併用療法の有効性と安全性を評価するため、日本国内の21施設で無作為化非盲検第2相試験を行った。患者はオシメルチニブ(80mg/日)+ベバシズマブ(15mg/kg、3週毎)またはオシメルチニブ単剤を投与され、性別、病期、EGFR変異により層別化された。主要評価項目は、ITT集団における無増悪生存期間(PFS)で、独立中央判定を行った。2018年1月から2018年9月の間に、122人が登録された(オシメルチニブ+ベバシズマブ群、61名、オシメルチニブ単剤群、61名)。追跡期間中央値19.8ヶ月において、PFS中央値はオシメルチニブ+ベバシズマブ群で22.1ヶ月、オシメルチニブ単剤群で20.2ヶ月、ハザード比0.862[60%CI:0.700-1.060、95%CI:0.531-1.397、片側ログランク検定:p=0.213)であった。グレード3以上の有害事象は、オシメルチニブ+ベバシズマブ群34例(56%)、オシメルチニブ単剤群29例(48%)に見られた。また、グレードを問わない肺臓炎がそれぞれ2例(3%)、11例(18%)、グレード3の肺臓炎は各群1例(2%)に認めらた。本試験では、EGFR遺伝子変異陽性非扁平上皮非小細胞肺患者の初回治療として、オシメルチニブ+ベバシズマブのPFS改善効果を示すことができなかった。

感想
成功より失敗の方が学ぶべきことは多いと言われます。残念な結果に終わった試験ですが、いくつか見える点もあるかと思います。まず例数設定ではオシメルチニブ単剤療法のPFSを18ヶ月(結果は20.2ヶ月)、オシメルチニブ+ベバシズマブを27ヶ月(結果は22.1ヶ月)と仮定しています。ベバシズマブが入るということで状態の良い人が選択されることを考えると、FLAURA試験のそのままでは見通しが甘かったかもしれません。もちろん最大の原因は思ったほど併用療法のPFSが伸びなかったことにあります。予想ハザード比は0.67にしています。サブグループ解析でこれをクリアしたのは、Del19、喫煙者で、逆に点推定のハザード比が1を超えているものは高齢者、L858R、非喫煙者でした。喫煙状況は大きく開いており目を引きますがたかだか30例程度の比較になっている点は注意が必要です。同じような傾向は以前紹介した試験でも見られますが、NEJ026試験[Saito H LancetOncol2019 PMID:30975627]では、非喫煙者もベバシズマブ上乗せで同じような効果が見られていますので、理解に苦しむところです。L858Rの方が上乗せ効果がないのもよくわかりません。L858Rに対してオシメルチニブが効果が低い可能性も指摘されおり、上乗せ効果があっても良さそうに思えます。姑息な臨床試験では対照群を弱くする、というのも常套手段です。その点オシメルチニブは単剤はなかなか勝てない相手であることも再認識させられました。ベバシズマブ上乗せにより肺臓炎が減るというのは良い知らせかも知れません。これはRELAY試験[Nakagawa K LancetOncol2019 PMID:31591063]でもNEJ026試験でも確認されており定説になりつつあります。ただしそのためだけに、敢えてベバシズマブ併用レジメン(オシメルチニブに変えてエルロチニブ+ベバシズマブ/ラムシルマブ)を選択するのは少し根拠として弱い気がします。今後もしオシメルチニブ肺臓炎による治療中断リスクが明らかになれば、その時点で考えるべきことと思います。