周術期の化学療法+ペムブロリズマブ、生存延長を証明できるか?

Perioperative Pembrolizumab for Early-Stage Non-Small-Cell Lung Cancer.

Wakelee H et al.
N Engl J Med. 2023 Jun 3. Epub ahead of print.
PMID:37272513.

Abs of abs.
切除可能な若い病期の非小細胞肺癌患者において、術前または術後補助として免疫チェックポイント阻害薬を使用することで一方のみ行うより大きな利益をもたらす可能性がある。今回は若い病期の患者を対象に、周術期のペムブロリズマブを評価する無作為二重盲検第3相試験を行った。切除可能なⅡ期、ⅢA/ⅢB(N2)の非小細胞肺癌に対し、術前化学療法としてシスプラチンベースの化学療法を4サイクル投与しペムブロリズマブ(200mg)またはプラセボを3週間に1回を上乗せした。その後手術と術後補助としてのペムブロリズマブ(200mg)またはプラセボを3週間に1回、最大13サイクルまで投与した。主要評価項目は、EFS(event free survival:無作為化を起点とし予定手術を妨げる局所進行、切除不能化、進行再発または死亡までの時間)と全生存期間とした。副次評価項目は、major pathological response、病理学的完全奏効、安全性とした。計397名がペムブロリズマブ群に、400名がプラセボ群に割り付けられた。事前設定された第1回中間解析の時点で、フォローアップの中央値は25.2カ月であった。24カ月時点のEFS率は、ペムブロリズマブ群で62.4%、プラセボ群で40.6%であった(ハザード比0.58[0.46~0.72];P<0.001)。24カ月生存率は、ペムブロリズマブ群80.9%、プラセボ群77.6%(P=0.02、有意水準に達せず)であった。Major pathological responseはペムブロリズマブ群30.2%、プラセボ群11.0%(19.2%差[13.9~24.7]、P<0.0001、閾値P=0.0001)、病理学的完全奏効はそれぞれ18.1%と4.0%に見られた(14.2%差[10.1~18.7]、P<0.0001、閾値P=0.0001)。治療全体で見ると、ペムブロリズマブ群で44.9%、プラセボ群で37.3%にグレード3以上の治療関連有害事象が発生し、そのうちグレード5はそれぞれ1.0%と0.8%であった。切除可能な若い病期の非小細胞肺癌において、術前化学療法後に切除、術後補助としてのペムブロリズマブは術前化学療法を行い後に手術する方法と比較して、EFS期間、major pathological response、病理学的完全奏効を有意に改善した。今回の解析では生存期間に差がなかった。

感想
最近立て続けに出されている術前治療→手術の新たなエビデンスです。計800例規模の研究で力の入れようがわかろうというものです。ただ前回の術後オシメルチニブやPOSEIDON試験などと同様統計設定が非常に複雑になっています。プライマリーエンドポイントがEFS、全生存期間、副次がmajor pathological response、病理学的完全奏効とされています。プロトコールのp.111にαの再利用計画が示されています。これに途中解析での消費関数が加わりますので時間依存のエンドポイントはさらに複雑化します。p.113に今回証明されたEFSについて中間解析計画が示されています。それによると第一回解析でα=0.01としてP=0.0051が割り振られています。今回はこれを達成したということで、αの99%(ほぼ全振り)をOSの解析に再利用されることになります。つまりα=0.0148+0.01=0.0248が現時点でOSに振られているαになりますが、どのように中間解析で消費していくのかはプロトコールが黒塗りされ見ることができません(読者としては個人情報以外のプロトコール黒塗りは承服できません)。今回は達成されなかったと書かれていますから、一回目はかなり厳しくしていたのでしょう。今回のOSのP値は0.02ですので、後で開いてくる免疫療法の特徴からおそらくエンドポイントが達成されると私は予想しています。EFSのサブグループでは、ドライバー変異ありについては症例が少なすぎますが、概ねペムブロリズマブの利益を受けています。ただアジア人で若干悪く気になります。PD-L1では1%未満があまりよくありませんが利益はありそうです。さて今後周術期の免疫療法が普及するにつれ、再発時はどうするのかが論点に上がってきます。これまでのように切除不能ⅢB/Ⅳ期+術後再発の一括りでは語れなくなります。再発時には有効な薬はすでに使いつくされており、古い薬しか使えず昔の治療成績[BMJ 1995 PMID:7580546]のようになってしまうかも知れません。