高齢者SCLCに対するCBDCA+CPT-11

Carboplatin and irinotecan (CI) vs. carboplatin and etoposide (CE) for the treatment of extended-stage small-cell lung cancer in an elderly population: A phase II/III randomized control trial.

Shimokawa T et al.
Lung Cancer. 2023 Epub 2023 Apr 22.
PMID:37156212.

Abs of abs,
日本では70歳未満の進展型小細胞肺癌(ED-SCLC)の標準治療はシスプラチン+イリノテカンとされている。高齢者に対するイリノテカンの使用についてはよくわかっていない。今回の試験はカルボプラチン+イリノテカン(CI)が高齢者ED-SCLC患者の生存期間を改善することを示すために行った。試験は高齢者ED-SCLCを登録した無作為化第Ⅱ/Ⅲ相試験である。患者はCI群とカルボプラチン+エトポシド(CE)群に1:1で割り付けられた。CE群はカルボプラチン(AUC 5mg/ml/min)とエトポシド(80mg/m2)が3週間毎に4サイクル投与された。CI群はカルボプラチン(AUC4mg/ml/min)とイリノテカン(50mg/m2,day 1,8)を3週毎に4サイクル投与した。計258人が登録され、無作為化された(CE群129例、CI群129例)。CE群とCI群の生存期間は12.0ヵ月[9.3-13.7]vs 13.2ヵ月11.1-14.6(片側P=0.11)、無増悪生存期間4.4ヵ月[4.0-4.7]vs 4.9ヵ月4.5-5.2、奏効率は59.5% vs 63.2%であった。CE群では骨髄抑制の発現率が高く、CI群では消化管毒性の発生率が高かった。治療関連死は3例であった(CE群で肺感染症1例、CI群で肺感染症と敗血症が1例づつ)。今回CI治療は良好な有効性を示したが、有意ではなかった。これらの結果から、CEは今でも高齢者ED-SCLC患者に対する標準治療であり続けると考えられる。

感想
高齢者の定義をどうするかはさておき、今回は71歳以上でPS0-2を対象としています。最高は90歳まで登録され、PS=2も15%ほどと、たとえ高齢、PS低下でもSCLCなら何とかという現場の判断が垣間見えます。試験レジメンは当然JCOG9511の拡張を意図しています。毒性として発熱性好中球減少は試験レジメンで9.7%、治療関連死は2例と許容範囲内と言えます。2次治療移行も試験レジメンで88.8%あり主にアムルビシンが使われています。要約にあるようにPFS、OS、奏効率に有意差が認められませんでしたが、少なくとも劣っているようには見えません。そのため主張は控えめにCEが標準治療として留まるということですが、オプションとしてあってもよいかと思います。CEとは好中球減少や貧血、血小板減少が少ないという毒性プロファイルの違いがあるのと、3連投でないためスケジューリングしやすいこともメリットかと思います。最近免疫チェックポイント阻害薬の普及により外来化学療法の治療枠が取りにくくなっています。ある程度時間のかかるレジメンを3日連続で確保しようとすると厳しい時もあります。さてPS2までの高齢者は何歳まで抗がん剤可能なのでしょうか?最近悩む例が増えてきました。私の感触では、85歳を超えると減量したCEでも骨髄抑制の遷延、PS悪化が確実に起こるように見えます。過去にはPSが良くても骨髄抑制から回復できなくなった例や、奏効しても退院できなくなった経験があります。あくまで個人的見解ですが、SCLCと言えど抗がん剤は80歳台前半までではないかと考えています。