MET発現とPD-L1とドライバー変異

Lack of correlation between MET and PD-L1 expression in non-small cell lung cancer revealed by comparative study of matched biopsies and surgical resection
samples.

Ilié M et al.
Lung Cancer. Epub 2023 May 4.
PMID:37150140.

Abs of abs.
MET発現とPD-L1スコア(TPS)は、進行非小細胞肺癌治療のためのコンパニオン診断薬である。今回は生検と外科的切除標本におけるMET発現とTPSの相関について評価した。非小細胞肺癌患者70人について生検検体と外科手術標本において、免疫染色によるMET発現(SP44)とTPS(22C3)の発現率と互いの相関および的次世代シークエンサーによる遺伝子変化を評価した。手術標本と生検標本間におけるMET Hスコア(P<0.0001)、および生検検体と手術標本におけるTPS(P<0.0001)に有意な相関を認めた。しかしMET Hスコア/発現サブグループとTPSとの間に有意な相関は認められなかった(P=0.47、P=0.90)。MET Hスコアは、扁平上皮癌と比較して腺癌で有意に高かった(P<0.0001)。遺伝子解析では、MET H-スコアは、標的となる遺伝子変化を有する非小細胞肺癌で有意に高かった(P=0.0095)が、TPSとの有意な相関は認められなかった。本研究では、非小細胞肺癌患者におけるPD-L1とMETの発現の間に有意な相関は認められず、個別の発現プロファイルに基づく個別化治療が重要であることが知られた。これらの知見は、非小細胞肺癌患者に対する効果的な免疫療法や標的療法の開発に貴重な示唆を与える。

感想
MET阻害薬は昔から研究されていますが、効果があまり出ず、また浮腫などの合併症も多くなかなか実用化されません。最初のALK-TKIであるクリゾチニブも初めはMET阻害薬として開発が始まっていることからも歴史の古さがわかるというものです。METは過剰発現、遺伝子コピー数増幅、遺伝子変異に分類され、どの話をしているかを抑えながらデータを読む必要があります。今回はMET発現とPD-L1発現は無関係、MET発現しているとドライバー変異が少ないとの結論ですが、確立したものではないので仮の情報です。本論文と対比するために、一番なじみ深いexon 14 skippingについての報告[Kato Y IntJCO 2021 PMID:33660106]を見てみました。日本からの68例のまとまった報告であり、それによるとMETex14の24例の検討ではあるもののPD-L1発現が高く、ICIの効果も高い(3/7で奏効率42.9%)という結果が報告されています。現在のところの私の印象もこの通りです。今回の論文で面白いのはFig5で、ドライバー変異とMET、PD-L1との箱ひげ図が載っています。EGFRはMETが少し高い傾向にあり、PD-L1が低い傾向にあります。TP53はMETもPD-L1も低い傾向にあります。肺癌が発生し耐性化していくこととなんとなく関係があるようで面白いと思います。
考察にも述べられていますがMET関連としては、抗体薬物複合体(ADC)であるテリソツズマブベトチン(teliso-v)が期待されています。ADCとは抗体に抗がん剤を付けたもので、teliso-vはMETを認識する抗体にmonomethyl auriastatin E(MMAE)というチューブリン阻害薬を付けたものになります。すでに乳癌に対してHER2抗体薬であるトラスツズマブに薬剤を付けたADC薬が使われています(エンハーツ、カドサイラ)。その流れで考えると肺癌に多いMETをターゲットにしたADCは、これから進んでくるはずです。長い歴史を持ちながらなかなか薬ができなかったKRASがG12Cに絞ることで活路を見出したように、歴史の長いMETもADCに活路を見出せるかも知れません。