TP53変異とエルロチニブ+ラムシルマブ

RELAY, Ramucirumab Plus Erlotinib (RAM+ERL) in Untreated Metastatic EGFR-Mutant NSCLC (EGFR+ NSCLC): Association Between TP53 Status and Clinical Outcome.

Nishio M et al.
Clin Lung Cancer. 2023 Jul;24(5):415-428.
PMID:37076395.

Abs of abs.
ラムシルマブとエルロチニブ併用療法(RAM+ERL)は、未治療進行EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌を対象としたRELAY試験において、無増悪生存期間の優越性を証明した。今回はRELAYにおけるTP53とアウトカムとの関係を検討した。治療としてERLとRAM(10mg/kg静注)投与またはプラセボ投与(PBO+ERL)を2週間毎に行った。血漿をGuardant360次世代シークエンサーで評価し、ベースラインでに何らかの遺伝子変化が見られる患者を今回の探索的解析に含めた。エンドポイントは、PFS、奏効率、病勢制御率(DCR)、DoR、OS、安全性、バイオマーカー解析とし、TP53とアウトカムの関連を評価した。TP53変異型は165例(42.7%;RAM+ERL 74例、PBO+ERL 91例)で検出され、野生型TP53は221例(57.3%;RAM+ERL 118例、PBO+ERL 103例)であった。TP53変異型と野生型の間で患者背景、併存する遺伝子変化は差はなかった。治療とは無関係に、TP53変異(特にエクソン8上の変異)は悪い結果と関連していた。すべての患者において、RAM+ERLはPFSを改善した。ORRとDCRは全ての患者を通して似ていたが、DoRに関してはRAM+ERLの方が優れていた。ベースラインのTP53遺伝子変異の有無による安全性の差は見られなかった。今回の結果から、EGFR+ NSCLCにおいてTP53遺伝子変異は予後不良因子であるが、VEGF阻害薬の追加でTP53遺伝子変異患者の予後を改善することが示された。RAM+ERLは、TP53と関係なくEGFR遺伝子変異陽性肺癌患者に対する有効な初回治療の選択肢である。

感想
TP53変異はVEGF-AとVEGFR2をアップレギュレートする[Wheler JJ Mol CancTher 2016 PMID:27466356]ため、TP53変異がある患者ではEGFR-TKIとVEGF阻害薬の併用で効果が高まることが予想されます。もともとのRELAY試験はそれを目的とした試験ではないため、今回の解析ではそれが示唆されるということが結論になります。TP53変異が含まれているとさまざまな治療薬の効果が落ちることは広く知られています。過去に当ブログ記事でも取り上げています。難しいのはTP53変異は様々な場所とパターンがあり、EGFR変異のように定義や扱いが簡単ではありません。したがってデータを同一に扱えないことに注意が必要です。今回のfig1を見ると、PFSにおいてTP53変異の有無に関わらずラムシルマブ群が上回っています。ハザード比はTP53変異ありで0.541、変異無しで0.789と差が大きくなっています。これがラムシルマブの有用性を示唆する点となります。また治療後のT790Mの確率はTP53変異群で高くラムシルマブ群で33.3%、プラセボ群でも38.9%と、野生型の18.9%、21.3%と数字上多くなっていました。オシメルチニブでもTP53併存でPFS悪化が報告されている[Vokes N JTO2022 PMID:35331964]ので、これらの点を考えるとTP53変異の併存のある症例にはERL+RAMを候補としてもよいのかも知れません。問題はTP53遺伝子をどう定義しどこで測定するかですが・・・。