ICIで第二癌のリスクは上がるか下がるか?

Reduced risk of secondary primary extra pulmonary cancer in advanced/metastatic lung cancer patients treated with immune checkpoint inhibitors.

Heudel PE et al.
Lung Cancer.2023 Jun 16. Epub ahead of print.
PMID:37339550.

Abs of abs.
肺癌後は、第二癌(SPC)を発症するリスクが高い。今回はデータベースを用いて進行肺癌における第二癌のリスクについて免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の影響を評価した。今回の後ろ向き研究では、2015年1月1日~2018年12月31日の間に治療が開始された患者のデータを使用した。第二癌としての肺癌は除外し、肺癌と同時に見つかった第二癌、第二癌なしで死亡した患者、追跡期間が6ヵ月未満の患者を除外した。共変量として診断時の年齢、性別、喫煙、転移、PS、組織型を用いて傾向スコアを算出した。傾向スコアには逆確率重み付け法を用いた。10796例中148例(1.4%)が第二癌と診断され、診断までの中央値は22ヵ月(7-173)であった。進行肺癌の全患者が、化学療法(n=9851、91.2%)、ICI(n=4648、43.0%)、分子標的治療(n=3500、32.4%)を含む1つの全身治療を受けていた。ICI治療を受けた4648例で40例(0.9%)の第二癌が報告され、免疫療法を受けなかった6148例では108例(1.7%)が報告された(p<0.0001)。多変量解析により、ICI治療は第二癌のリスク低下と関連することが確認された(ハザード比0.40[0.27-0.58])。今回の結果からICI治療は、第二癌のリスク低下と有意に関連していた。この結果を確認するための前向き研究が必要である。

感想
完治の望める病期への免疫療法の広がりにより今後解明が必要な分野です。これまで抗がん剤を行い長期生存するのは抗がん剤+放射線治療くらいしかなかったですが、それでも何年かした後に血液疾患の発症が高い、新規肺癌の発症率が高いなどと言われてきました。今回はICIによりそれが下がるというデータですが、まだまだ確実なことは言えません。今回のリスクモデルでは第二癌のリスクがICIでハザード比0.40であるものの、分子標的治療では1.02であまり変化が見られませんでした。これには様々な解釈が可能です。ICIが第二癌の芽をつぶしているというのがストレートな見方ですが、一方でICIに反応するような遺伝学的体質ではもともと肺癌以外の癌が少ないのかも知れません。また化学療法やホルモン異常などの有害事象との交絡もどうなのかわかりません。参考になる情報として乳癌に対するデュルバルマブの臨床試験では治療群に第二癌はなく、対照群に3例あったことが考察で述べられています。ただ皮膚癌ではICIにより第二癌のリスクが上がることが報告されています。主にICIや分子標的治療による長期生存が増えた今、フォローアップに際し他臓器の悪性腫瘍も気を付けなければならなくなりました。これにirAEも加わると、普通のかかりつけ医となんら変わらなくなります。