ILD合併肺癌とTregとの関連、まだわからないことが多い

T cell immunity in interstitial lung disease with non-small cell lung cancer patients.

Isono T et al.
Lung Cancer. Epub 2023 Jun 9.
PMID: 37321075.

Abs of abs,
間質性肺疾患(ILD)合併非小細胞肺癌に対する治療選択肢は限られている。この病態に対する免疫療法の役割と有害事象に関することはよくわかっていない。今回はILD合併非小細胞肺癌における免疫チェックポイント阻害薬(ICI)関連肺炎の機序の解明のために、ILD合併と非合併の非小細胞肺癌の肺組織におけるT細胞の特徴と機能を調べた。外科切除肺組織においてILD合併患者と非合併患者のT細胞プロファイルと機能を解析し、まず肺組織の浸潤細胞のT細胞プロファイルをフローサイトメトリーで解析し、次いで刺激したT細胞によるサイトカイン産生に基づいてT細胞の機能を測定した。免疫チェックポイント分子(Tim-3、ICOS、4-1BB)を発現したCD4+ T細胞、CD103+CD8+ T細胞、制御性T(Treg)細胞の割合は、ILD合併患者で高かった。肺組織におけるT細胞の機能では、CD103+CD8+ T細胞はIFNγ産生と正の相関を示したが、一方でTreg細胞はIFNγおよびTNFα産生と負の相関を示した。CD4+およびCD8+T細胞によるサイトカイン産生は、CD4+T細胞からのTNFα産生がILD合併例で低かったことを除いてILD合併、非合併間で有意差はなかった。手術できる安定したILD合併非小細胞肺癌において、T細胞はTreg細胞とバランスを取った状態で肺組織に多く存在する。これはILD合併患者におけるICI関連肺炎の発症と関連する可能性がある。

感想
IPFとTregの関係は精力的に研究されていますが、結果は一定せず段階や病態そのもの、またはサンプルによる差が大きいようです。TregとTGFβやCXCL12/CXCR4経路、IFNγを介する経路などが病勢進行と関連することが考えられていますが、競争の激しい分野であり結論は出ていません。今回は肺癌で切除した肺での研究ですが、そもそも癌周囲の環境を一般化できるかの問題もあり、いくつかの示唆を得ることに留まります。
今回の結果はILD合併でTregが多いものの、そのIFNγ、TNFα産生能は落ちているということでした。かなりの労力を使って解析されています。中心となるTreg細胞の割合はFig3Aにその結果が示されています。全体として高いとの結論ですが、よく見ると症例数は少ないものの、極端に高い群と低い群に別れるように思います。治療に関してもILD合併肺癌に方向性が出しにくいように、このカテゴリ―の多様性を示唆する結果のように見えます。昔から私もこの分野に興味があるのですが、そもそもILDに時間経過、病態の多彩な広がりがある上に、発癌メカニズムも多彩であるため多様性の2乗のようなことになっており、統一した結論を得るのは困難ではないかと感じています。研究の方向性としては、分類をうまく行うために分子プロファイルから細かいカテゴリー化を行うことになりますが、それには膨大なデータが必要であり、そこがまた壁になります。