HPDに関係する遺伝子変異

Comprehensive Clinical and Genetic Characterization of Hyperprogression Based on Volumetry in Advanced Non-Small Cell Lung Cancer Treated With Immune Checkpoint Inhibitor.

Kim Y et al.
J Thorac Oncol. 2019 Sep;14(9):1608-1618.
PMID:31195179

Abs of abs.
Hyperprogressive disease(HPD)は、腫瘍増加速度が加速する状態であり、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療における新しい進行形式として認識されている。今回の研究はHPDの特徴と予測マーカーについて検討することである。335人のICI単剤で治療された進行非小細胞肺癌について臨床背景、画像所見について後ろ向き解析を行った。画像データとして、ベースラインとフォローアップCTを比較し、腫瘍径と体積について定量的および経時的に分析した。このデータは個々の380個の遺伝子のディープシークエンス結果と合わせて評価した。RECIST1.1での評価で135人がPDとなり、うち48人が体積評価でのHPDに相当し、44人がRESICT1.1でのHPDとされた。同じPDでも体積評価のHPDでは有意に生存期間の短縮を認めた(4.7ヶ月対7.9ヶ月、P=0.004)ものの、従来評価のHPDとの生存期間の差は認めなかった。体積評価のHPDは生存に関する独立した因子となっていた。またNLRが4より大きいもの、LDHが正常上限より大きいものは体積評価のHPDと関連していた。さらにKRASとSTK11変異が体積評価のHPDに多いこと (3/16) を見出した。これらの変異は体積評価のHPDでないものには見られなかった。今回の研究から、体積評価に基づくHPDは一方向評価に基づく定義より正確であることが知られた。ICI治療前のNLRとLDH値とSTK11およびKRAS変異の存在は、HPDを予測するマーカーとして使える可能性がある。

感想
通常の一方向評価と、体積評価を使ったHPDの研究です。この体積評価は従来の一方向評価を基にしたものではなく、アルゴリズムによる自動計算のようです。一方向での計算ではHPDとされない例として、小さい遠隔転移が無数に出てくる症例が挙げられています。小さい転移あるいは小さい病巣は測定不能病変となるため、測定径和での急速な増大が計算できないということになります。その点を考えるとアルゴリズムを使った体積評価が有用ということになりますが、検出数は大した差はなく、従来法でも実用には十分です。HPDと関係がありそうな背景因子は、要約ではNLRとLDHとされていますが、PS(0-1、2≦;P=0.07)、リンパ球数(<1000、≧1000;P=0.083)も無視できない要素です。余談ですが本論文でのNLRは”dNLR = derived NLR”で好中球数 / (リンパ球数 – 好中球数)と説明されています。これは明らかに間違いで、これでは基本的に負の数値を取ってしまいます。既報によればdNLR = 好中球数 / (白血球数 − 好中球数)です[Proctor MJ BJC2012 PMID:22828611]。HPDはおそらく腫瘍側の因子より、宿主側の要因が大きいように思いますが、STK11とKRASがHPDに関係があるかもしれないという情報は少し頭に留めておく必要があるかもしれません。過去にはKRASと免疫治療の間にあまり関係がなさそうとの論文を取り上げていますが、KRAS変異のサブタイプについては含みを残しています。