CASPIAN試験、先行研究と大差なし

Durvalumab plus platinum-etoposide versus platinum-etoposide in first-line treatment of extensive-stage small-cell lung cancer (CASPIAN): a randomised, controlled, open-label, phase 3 trial.

Paz-Ares L et al.
Lancet.2019 Nov 23;394(10212):1929-1939.
PMID:31590988

Abs of abs.
進展型小細胞肺癌は多くの場合、進行が見られた時点で予後が限られている。最近この進展型小細胞肺癌に対する免疫療法の可能性が示されている。今回のCASPIAN試験は進展型小細胞肺癌に対しプラチナ+エトポシドにデュルバルマブ±トレメリムマブの評価を行った試験である。無作為化オープンラベル第Ⅲ相試験で、23ヵ国209施設で行われた。適格基準は未治療進展型小細胞肺癌に、PS0、1であり測定可能病変を持つことである。患者は、デュルバルマブ+プラチナ+エトポシド、デュルバルマブ+トレメリムマブ+プラチナエトポシド、プラチナエトポシドのみの3群にランダムに均等割付けされた。プラチナエトポシドは、day1-3にエトポシド80〜100㎎/㎡にカルボプラチンAUC5-6またはシスプラチン75-80㎎/㎡のいずれかを主治医が選択し投与した。免疫療法群の患者は、3週間毎4サイクルまでプラチナ+エトポシド+デュルバルマブ1500㎎、トレメリムマブ75㎎を投与され、さらに維持療法としてデュルバルマブ1500㎎を4週間毎投与された。プラチナ+エトポシドのみの群は3週間毎に最大6サイクルの投与とし、主治医判断で予防的全脳照射を追加された。プライマリーエンドポイントは全生存期間である。今回はあらかじめ計画された中間解析として、デュルバルマブ+プラチナ+エトポシド群とプラチナ+エトポシド群の結果を報告する。安全性は試験治療を少なくとも1回受けたすべての患者で評価された。2017年3月から2018年5月の間に登録が行われ、268人の患者がデュルバルマブ+プラチナ+エトポシド群に、269人がプラチナ+エトポシド群に割り当てられた。デュルバルマブ+プラチナ+エトポシドは、ハザード比0.73[0.59-0.91];p=0.0047で、全生存期間を有意に改善した。全生存期間中央値は、デュルバルマブ+プラチナ+エトポシド群で13.0ヶ月[11.5-14.8]、プラチナ+エトポシド群では10.3ヶ月[9.3-11.2]で、 18ヶ月時点での生存患者は34%[26.9-41.0]対25%[18.4-31.6]であった。グレード3/4の有害事象は、デュルバルマブ+プラチナ+エトポシド群で62%およびプラチナ+エトポシド群で62%で見られた。死亡に至る有害事象は5%対6%であった。。進展型小細胞肺癌に対する初回治療としてのデュルバルマブ+プラチナ+エトポシドは、全生存期間を有意に改善した。安全性の所見は、既存のものと一致していた。

感想
少し前に発表されたデータで、2020ASCO virtual meetingでもアップデートが報告されています。3群比較の設定で、P値の割り振りは今回のPE対PE+デュルバルマブの比較で0.04、PE対PE+デュルバルマブ+トレメリムマブの比較で0.01ということのようです。余談ですが小細胞肺癌治療のおいて日本とそれ以外の違いは意識されているようで、Introductionにおいて”Outside of Japan, the current standard-of-care treatment in the second-line setting is…”の記述がありました。
さて画像でも出しているように、先行するIMpower133試験との比較を避けることはできません。本文でも”align with”というように差は強く意識されています。本試験ではPEが6コースまで許容されていた点が強調されています。私が思うに一番大きな点は、IMpower133がプラセボコントロール、CASPIANがオープンラベルである点です。これはPFS、毒性評価にわずかに影響すると思われます。主な結果を並べてみましたが、非常に似通ったデータということになります。またPCIは今回主治医判断で追加されましたが、割合は8%でした。兼ねてよりPCIの評価は揺らいでおり、特に進展型小細胞肺癌においてよくわからなくなっています。少なくとも日本では推奨されません。ただ臨床的な疑問として治療前に脳転移が存在し、治療後に縮小しつつわずかに残存、しかし免疫療法による維持療法がなされていた場合の方針は明らかではありません。治療として全脳照射かSRTのどちらか、またそれをいつ行うのかについては全くコンセンサスがありません。また維持療法中に脳転移再発した場合、非小細胞肺癌のように局所療法の追加が良いのでしょうか?これらは多数の後ろ向き解析にてある程度の方向性がわかると思います。
これから主として製薬メーカー側から、偶然の余地のあるサブグループ解析をもって使い分けなどを提案してくるでしょう。しかし論文をそのまま読む限りはIMpower133とCASPIANの間に大きな差はなさそうです。それだけきちんと臨床試験がなされているということであり、小細胞肺癌に対する免疫療法の上乗せ効果は確実であるということの証明でもあります。