免疫チェックポイント阻害薬投与直後のソトラシブで肝機能異常重篤化

Severe sotorasib-related hepatotoxicity and non-liver adverse events associated with sequential anti-PD(L)1 and sotorasib therapy in KRAS G12C-mutant lung cancer.

Chour A et al.
J Thorac Oncol. 2023 May 20 Epub ahead of print.
PMID:37217096.

Abs of abs.
非小細胞肺癌において、抗PD-(L)1療法と分子標的治療の逐次使用は有害事象(AE)の増加と関連することがある。抗PD-(L)1からKRAS G12C阻害剤ソトラシブへの逐次使用、または併用により重度の免疫介在性肝障害を誘発する恐れがある。今回は抗PD-(L)1とソトラシブの逐次投与で、肝毒性とそれ以外のAEが増えるかを検討した。フランスの16施設において、ソトラシブ治療を受けた連続症例の多施設後ろ向き研究を行った。診療録からソトラシブ関連AE(NCI-CTCAE v5.0)を同定した。グレード3以上のAEは重症とした。逐次投与群はソトラシブの前治療が抗PD-(L)1であるものとし、それ以外を対照群として定義した。102人にソトラシブを投与された、逐次投与が48人(47%)、対照群が54人(53%)であった。対照群の患者は、87%の症例でソトラシブ前に抗PD-(L)1に続いて少なくとも1つの治療レジメンを受けており、13%の症例ではソトラシブ前に抗PD-(L)1を受けていなかった。重度のソトラシブ関連AEは、対照群と比較して逐次投与群で有意に頻度が高かった(50%対13%、p<0.001)。逐次投与群では24人(24/48、50%)に重度のソトラシブ関連AEが発現し、そのうち16人(67%)に重度のソトラシブ関連肝障害が発現した。重篤なソトラシブ関連肝毒性は、対照群に比べ逐次投与群で3倍(33%対11%、p=0.006)であった。致命的なソトラシブ関連肝毒性は見られなかった。肝臓以外の重篤なソトラシブ関連AEは、逐次投与群で有意に頻度が高かった(27% vs 4%、p<0.001)。ソトラシブ関連の重篤なAEは、ソトラシブ開始前30日以内に最後の抗PD-(L)1投与を受けた患者で典型的であった。抗PD-(L)1とソトラシブの逐次投与は、ソトラシブ関連の重症肝障害および重症非肝障害のリスクを有意に増加させていた。最後の抗PD-(L)1投与から30日以内にソトラシブ開始を避けたほうが良いだろう。

感想
免疫チェックポイント阻害薬終了後にはこれまでと違って様々な変化が報告されています。逐次使用の薬剤の中で有名なのはオシメルチニブによる肺臓炎です。それ以外でも薬疹が出なかったものが出るようになったり、抗がん剤そのものも若干効果が高くなる印象があります。今回ソトラシブがその一つとして追加されたという報告です。ドライバー変異の中でもKRAS変異は免疫療法に反応しやすいとされ、またソトラシブが既治療例にしか使えないことから、状態が良ければプラチナ2剤+PD-(L)1阻害薬が前治療に入っていることはよくあると言えます。当院でも遺伝子パネル検査の普及により、KRAS変異の検出は確実に多くなっています。とは言えなかなかG12C変異は出ないのですが。
逐次使用の場合、ソトラシブ開始から肝機能異常のピークは中央値で56日、対照群の場合中央値は26日でした。治療としては多くは休薬し再開しないことで対応し、また一部でステロイド投与が行われていました。肝機能以外では下痢、倦怠感が目立ちます。まだまだ症例を集めて検討していく必要がありますが、最終投与から1ヵ月以内はソトラシブ投与を避けるようにしていきたいと思います。