オリゴメタの同定にはPET/CTがよい

Detection of oligoprogressive disease in oncogene-addicted non-small cell lung cancer using PET/CT versus CT in patients receiving a tyrosine kinase inhibitor

Terry LN et al.

Lung Cancer 2018 Dec; 126:112–118

PMID:

 

Abs of abs.
癌遺伝子異常に強く依存している非小細胞肺癌では、チロシンキナーゼ阻害剤(TKIs)の利益を最大限引き出すために、個数の少ない病勢進行(OPD)に対して局所治療(LAT)で治療していくことがある。今回は中枢神経系以外の初期の進行におけるOPDの検出のため、PET/CT対CTの比較を行い、どちらがOPD検出に対してより感受性があるかを決定した。2010年から2016年において、治療TKIが存在した転移性非小細胞肺癌、つまりEGFR遺伝子変異、ALKまたはROS-1融合遺伝子を有する患者を同定した。最初の中枢神経系以外での進行を同定したスキャン方法を記録し、OPD(≦4病変)または非OPD(> 4病変)かを分類した。全部で67人が解析可能であった(EGFR変異=37、ALK=28、ROS1=2)。OPDはPET/CTで81.3%(26/32)、CTで68.6%(24/35)で検出された(p=0.363)。これらのうち、PET/CTでは17/26(65.4%)、CT群では5/24(20.8%)に局所治療が行われていた(p=0.004)。最初に中枢神経系以外の進行が認められ、かつ6週間以内に別のモダリティスキャンを受けた患者を解析すると、91.7%(11/12)でCTが先行、またCT進行が確認された例においては75%(6/8)でその後のPET/CTで確認することができたが、PET/CTで進行が確認されたものはその後のCTでも0%(0/5)であった。またPET/CTで検出された群では、進行までの時間(TTP)、進行後にTKIの利益があった時間(TTP2)および全生存期間(OS)が延長していた(p=0.001、p=0.032、p=0.01)。PET/CT(N=26)およびCT(N=24)で検出されたOPDのサブグループでは、統計学的有意差はないものの局所治療を受けた群(65.4%[17/26]および20.8%[5/24])ではTTP2、OSが延長していた。今回の検討から、PET/CTは、CTよりも多くの中枢神経以外のOPDを検出できるとまでは言えないが、高い確率で局所治療に適した患者を同定できるようである。これは病勢進行が疑われる時に、他のスキャン方法に変更する場合は、PET/CTがより敏感であることに対応する。癌遺伝子異常に強く依存している非小細胞肺癌へのTKI治療においては、PET/CT対CTの長期的な影響を評価するために、ランダム化試験が求められる。

感想
個数の少ない病勢進行、いわゆる”oligometastasis”は肺癌診療における最近の話題の一つです。Pubmedで”oligometa* lung”で検索すると昨年、今年と100本以上の論文がヒットします。そもそもTNM分類を現行の第8版に変更した際にM1bとcを分けたのもオリゴメタを分けるためでした[Eberhardt WE JTO2015 PMID:26536193]。TKI治療に限らず、経過中に出現し局所治療が可能なものは放射線あるいは切除が行われる施設も多いようです。今年の肺癌学会2日目にも韓国の先生方との共同企画でこのオリゴメタ治療のことがプレゼンテーションされていました。あちらでは肝転移に対するラジオ波も含め局所療法が積極的に行われているようでした。聞いていて私の考え方のエビデンス主義が強すぎ、もう少し頭を柔らかくする必要性を感じました。肺癌が最初から全身疾患であった場合、根治手術や根治照射ですら結果的には局所療法に過ぎないでしょう。そう考えるとオリゴメタの場合の対処は特殊ではなく、むしろ癌診療の中心をなすものかもしれません。
今回の論文は手法的に気になる点は多いのですが、オリゴメタを積極的に見つけて対応していくためにはPET/CTを取っていく必要があると解釈しました。ただしPETの方が感度が高いのは当たり前だろうし、コストの問題も気になるところです。また本当に予後が伸びるか、最適な間隔はどれくらいかなど課題山積です。初回治療で数個残っていた場合に処置(放射線照射か外科切除)を加えた方が予後が良くなる[Gomez DR LancetOncol2016 PMID:27789196]こともあり、今後は化学療法レジメンばかりでなく、個別の対応も少しづつ細かくなっていき肺癌診療はますます複雑怪奇を極めていきそうです。