PETによる原発巣と転移巣の効果判定の不一致

18F-FDG PET/CT for assessing heterogeneous metabolic response between primary tumor and metastases and prognosis in non-small cell lung cancer.

Peng L et al.
Clin Lung Cancer. 2022 Nov;23(7):608-619.
PMID:36089482.

Abs of abs,
18FDG-PET/CT画像を用いて、非小細胞肺癌における原発巣と転移巣の治療前後における不均一な代謝反応を評価し、予後との相関を検討した。治療前後に18FDG-PET/CTを施行した非小細胞肺癌患者のデータを後ろ向き解析した。18FDG-PET/CTを用いて、いずれかの転移巣と原発巣の代謝反応の差を評価した。また、代謝反応の差と予後との相関も解析した。原発巣56、転移巣491を含む56例の非小細胞肺癌患者が登録された。46.4% (26/56) に代謝反応の差が認められ、特にIV期の患者や代謝負荷の高い転移巣で差が大きかった。代謝反応の差は、全生存期間および無増悪生存期間の悪化と有意に関係していた。多変量解析でこの差は全生存期間(ハザード比4.36[2.00-9.49]; P<0.001)で独立した予後不良因子であったが、無増悪生存期間ではそうなっていなかった。リンパ節転移と間の差は、全生存期間の短縮と相関していたが(P<0.001)、無増悪生存期間との関連は見られなかった。
治療後の非小細胞肺癌において、原発巣と転移巣との間でPET/CTでの代謝反応の差が見られた。この差は予後不良と有意に関連し、全生存期間の独立した予後因子である。

感想
一般的に行われるCT評価では縮小効果が見られても、活動性のがん細胞が残っているのか、瘢痕組織が残っているだけかは分かりません。悪性リンパ腫などではPETによる治療効果判定が行われていますが、今回はそれに類似した方法で治療後に原発と転移巣のPET反応の差がある場合予後不良ということを述べています。SUV値で見た場合45%以上減少を(代謝)部分奏効、75%以上増加を(代謝)病勢進行と扱います。これらが病変間で違う場合、今回問題となる「代謝反応の差」となります。反応に差がある病変で多いのは胸膜、骨、リンパ節、肺内転移の順でした。EGFR変異に対する先行研究により転移巣との不均一性が知られており、代謝の差は生物学的な不均一性を反映しているようです。現在の保険制度の下で肺癌診療にそのまま当てはめることはできませんが、サイズが縮小しているが腫瘍マーカーが上昇している場合や、その逆など状況によってはPETによる治療効果を見ても良い場面があるかも知れません。