再生検のTPSが変化すると次治療が効きにくい?

Re-biopsy after first line treatment in advanced NSCLC can reveal changes in PD-L1 expression.
Frank MS et al
Lung Cancer.2020 Sep 12;149:23-32.
PMID:32949828.

Abs of abs.
初回治療後の進行非小細胞肺癌(NSCLC)における再生検により、治療中に生じた腫瘍変化を明らかにできる。今回は再生検を行うことの実現可能性、合併症のリスク、臨床的妥当性を全体的に調査した。前向き単施設研究で、初回治療を受け進行が見られたNSCLCで分子標的治療でない患者を対象とした。ベースラインで診断用生検を行い、CTまたはPET/CTで見られる進行病変から優先的に生検を行った。主要評価項目は、再生検での合併症率を含めた実現可能性であった。副次評価項目は臨床的な有用性であり、これは治療方針変更を考える、つまりPD-L1 Tumor Proportion Score(TPS)の変化といった新たな組織像を指すものと定義された。NSCLC患者51人が再生検を受けた。生検までの期間中央値は7日[0-31]であった。合併症率は6%(n=3)で、それぞれ気胸、肺水腫を伴う気胸、肺炎であった。重篤な合併症や慢性合併症は発生しなかった。PD-L1測定に十分な検体が得られたのは51例中46例で、その他は検体不足や、悪性細胞が取れていない、真の進行かどうか疑念が持たれる例であった。PD-L1 TPSの変化は33%の患者(n=15)で観察され、17%(n=8)には臨床的に有用な変化の可能性があった。化学療法を受けた患者では、PD-L1 TPSの変化の確率が有意に高かった。本研究から、再生検の合併症のリスクは低く、NSCLCの進行が疑われる患者において臨床的有用性があることが示された。

感想
治療によりTPSが変化するかどうかは、これまで何回も検討されてきました。そこには①再生検の場所が一致しないケースがある、②もともとの不均一性と区別できないという大きな問題が存在します。今回もその問題がクリアされたわけではないですが、ある程度の症例数で、その後の治療経過も見ている点で臨床的有用性があります。
今回の症例数は46人で、15人の患者(33%)にTPSの変化見られました。15人の患者のうち7人でTPS上昇、8人でよりTPS低下が見られています。化学療法で治療された患者では、TPS上昇の確率が高く、免疫療法では低下する傾向にありました(Fig4A)。TPSは<1%、1-5%未満、5-50%未満、50%以上の4カテゴリーとし、カテゴリー間の移動を変化と定義しています。TPSの面からみると、ベースライン50%以上の患者においてTPSの変化の頻度が高い結果でした。
特筆すべきはTPSが変化した群と、変化しない群では次治療のPFSに差があり、中央値は25日対59日で、変化のない群の方が良好でした。私としてはTPS陰性で殺細胞性抗癌剤を行い、その後再生検でTPS発現が上昇し、免疫治療が奏効することがあれば、美しいと思いますが、実証は困難でしょう。