ゲフィチニブ→オシメルチニブのシークエンスは有用なのか

Overall Survival From the EORTC LCG-1613 APPLE Trial of Osimertinib Versus Gefitinib Followed by Osimertinib in Advanced EGFR-Mutant Non-Small-Cell Lung Cancer.

Remon J et al.
J Clin Oncol. 2024 Apr20;42(12):1350-1356.
PMID:38324744.

Abs of abs.
オシメルチニブはEGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺癌に対する標準治療として確立されているが、逐次治療法(ゲフィチニブの後にオシメルチニブを投与)とは公式に比較されていない。第Ⅱ相APPLE試験では156人の初回治療患者が登録され、2つの治療戦略が評価された。オシメルチニブを最初から投与する方法と、まずゲフィチニブを投与し、進行時にオシメルチニブを投与する逐次治療法である。この場合の進行とは、画像上の進行と関係なく血漿T790Mが検出された時、または画像上の進行があった時である。逐次投与群ではベースラインの脳転移の割合が高い(29%対19%)ことを除けば、バランスがとれていた。プロトコールに従い逐次投与群では、73%の患者がオシメルチニブに切り替えていた。オシメルチニブから入ると、逐次治療法に比べて脳転移のリスクが低かったが(ハザード比0.54[0.34-0.86])、全生存率は両群間で同等であり(ハザード比1.01[0.61-1.68])、18カ月生存率はそれぞれ84%と82.3%であった。今回の試験は、進行EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌において、逐次治療法は脳内病変の頻度が高くなるが生存率は同等であることを示唆している。

感想
あくまでも副次的な解析の報告です。元試験[Remon J AnnOncol2023 PMID:36863484]は、血漿でT790Mの出現を定期モニタリングしオシメルチニブに早期に切り替えすることができるかどうか(結果として最適な治療シークエンスになるか)を見た試験です。あくまで切り替え可能性を見るためで第Ⅱ相試験となっています。A群:最初からRECIST-PDまでオシメルチニブ、B群:ゲフィチニブで開始し、血漿T790M陽性またはRECIST-PDのどちらかでオシメルチニブに切り替える。C群:ゲフィチニブで開始し、PDでオシメルチニブに切り替える。また元試験のエンドポイントは、B群でオシメルチニブ投与18ヵ月のPFS率としています。今回はその中のA群とB+C群の比較報告です。細かい点はともかく最初からオシメルチニブの場合と、ゲフィチニブで開始し(T790Mに関係なく)途中でオシメルチニブに切り替えた場合の比較ができることになります。結果として、脳内のPFS(BPFS)は中央値で34.3ヵ月対22.3ヵ月とオシメルチニブから開始する方が大幅に勝っていました。しかし全生存期間の方は生存曲線の見た目にも差がなく、ハザード比は1.01となりました。生存に差があれば議論が起こりますが、それでも急な脳転移でADLが大きく損なわれることもあるため、脳内の進行を遅らせることができるのは意義があると考えられます。しかし薬剤費の観点から見ると、ゲフィチニブで治療開始し、オシメルチニブへのスイッチした方が安くなりますから、生存期間が変わらないのであれば有力な治療選択肢とも言えます。有害事象が少ないように見えたオシメルチニブですが、実臨床では食欲不振、間質性肺炎、血栓、心機能障害など有害事象もある程度出ます。ただ日本の保険診療では、T790Mを確認しないと第一世代TKIからオシメルチニブへのスイッチができないので、RECIST-PDでの機械的なスイッチは実現不可能です。オシメルチニブが飲めない人も少なからず存在します。減量した第1世代TKIなら飲めるケースもあり、またエルロチニブ+ラムシルマブの全生存期間の良い結果も出ているので、古い世代のTKIで始めることもあながち捨てたものではないのかも知れません。