バリシチニブ+レムデシビルは重症例に有効

Baricitinib plus Remdesivir for Hospitalized Adults with Covid-19.

Kalil AC et al.
N Engl J Med.2021 Mar 4;384(9):795-807.
PMID:33306283

Abs of abs.
重症コロナウイルス感染症(Covid-19)は、炎症の制御不全と関連している。JAK阻害剤であるバリシチニブとレムデシビル併用療法の効果は未知である。入院中の成人患者を対象に、バリシチニブとレムデシビルの併用を評価する二重盲検ランダム化プラセボ対照試験を行った。すべての患者に、レムデシビル(10日間以下)とバリシチニブ(14日間以下)またはプラセボ(対照群)を投与した。主要評価項目は,回復までの時間であった.副次評価項目として15日目の臨床状態を重要視した。計1033人の患者が無作為化を受けた(515人が併用群、518人が対照群)。バリシチニブを投与された患者の回復までの時間の中央値は7日[6-8]であり、対照群の8日[7-9]と比較して(回復比1.16[1.01-1.32];P=0.03)、15日目の臨床状態が改善するオッズが30%高かった(オッズ比1.3[1.0-1.6])。登録時に高流量酸素投与または非侵襲的人工呼吸を受けていた患者における回復までの時間は,併用療法では10日,対照療法では18日であった(回復率比1.51[1.10-2.08]).28日後の死亡率は,併用群で5.1%,対照群で7.8%であった(ハザード比0.65[0.39-1.09]).重篤な有害事象は,併用群が対照群よりも低く(16.0%対21.0%;差:-5.0%ポイント[-9.8~-0.3];P=0.03),新規感染症の発生頻度も低かった(5.9%対11.2%;差:-5.3%ポイント[-8.7~-1.9];P=0.003)。バリシチニブとレムデシビルの併用は,Covid-19患者,特に高流量酸素または非侵襲的人工呼吸を受けている患者において回復時間を短縮し,臨床状態の改善を促進する上で,レムデシビル単独よりも優れていた.または重篤な有害事象も少なかった。

感想
東京大阪では山を越えた感のあるコロナ流行も地方都市ではまだまだの感があります。この一年でもコロナ診療が少しづつ進歩しています。今回の論文は3ヶ月程前のものですが、2021年4月23日にこれまでリウマチ、アトピー性皮膚炎の治療薬であったバリシチニブのCovid-19への適応追加が承認され、以後実地臨床に使えるようになってきていますので読んでみました。
この薬の開発は、Covid-19感染症による免疫活性化経路および抗ウイルス作用を持ちそうな経路と、そこがターゲットとなる候補薬剤をAIにより絞り込むという手段で行われています。ターゲットと一つとしてNAKが取り上げられました。受容体に結合したウイルスが侵入するために細胞表面からエンドソームへの小胞輸送が行われる必要があり、NAKはそこを制御しています。またJAK-STATのシグナル伝達経路もサイトカイン放出経路の重要部分を担っています。つまりウイルス増殖経路のNAKとサイトカイン放出経路のJAKの2つの経路を阻害することが考えられたわけです。候補薬剤のうち副作用の少なさの点で候補になったのが今回のバリシチニブです。余談ですがNAK阻害の候補としてはスニチニブとエルロチニブの組み合わせも候補に上がったとのことです。
臨床試験を見てみると、対象として4が酸素不要、5が酸素投与、6が高流量酸素またはNPPV、7が挿管人工呼吸やECMOというカテゴリーになっており、患者登録がなされました。治療としてレムデシビル(10日間まで)とバリシチニブ/プラセボ(14日間まで)が投与され比較されました。この間のステロイド投与は主治医判断に任されています。ステロイドについては、全体として223人に投与されており、投与された集団では回復率にあまり差はなさそうです。結果の要約はFig2であり、重症例ほど治療効果がありそうです。また挿管人工呼吸・ECMOへの進展に至る割合は0.64[0.44~0.93]となり、重症化を防ぐメリットもありそうです。
現在、トライ&エラーを繰り返しながら現場での診療が続けられています。多少の混乱は致し方ないところですが、今回の結果で注意すべき点は、あくまでもレムデシビル+パリシチニブの有効性が示されただけで、これにステロイド加えるべきかどうかは全く結論が出ていないということです。