ペムブロリズマブの減量投与

Real-world overall survival after alternative dosing for pembrolizumab in the treatment of non-small cell lung cancer: A nationwide retrospective cohort study with a non-inferiority primary objective.

Grit GF et al.
Lung Cancer. 2024 Aug 30;196:107950.
PMID:39236576.

Abs of abs,
ペムブロリズマブ治療は効果があるが、より費用対効果が高く持続可能な治療戦略が求められている。そのためオランダの一部の病院では、ペムブロリズマブ投与法として代替的に体重に基づく低用量での投与法を実施している。 このことは、全国登録を用いてペムブロリズマブ代替投与法の全生存期間を標準量投与と比較する良い機会となった。 本試験は非劣性を主要目的とした後ろ向きコホート試験である。 2021年1月1日から2023年3月31日までに、1966人の非小細胞肺癌患者をペムブロリズマブ(単剤または併用療法)の初回治療を行った。ペムブロリズマブの体重に応じた代替投与法(100/150/200mgQ3Wまたは200/300/400mgQ6W)は604例に、ペムブロリズマブ標準投与(200mgQ3Wまたは400mgQ6W)は1362例に行われた。 選択した共変量を用いたCox比例ハザードモデルを用いて、代替投与法と標準投与法との間のOSを比較した。 非劣性マージンはOSのハザード比1.2に設定された。 非劣性はOSハザード比の95%信頼区間の上限が1.2より小さいか等しい場合に確定する。背景として年齢(66.7歳±9.4歳)、性別(45%が女性)、治療法の組み合わせの分布は両群で同様であったが、併存症スコアは標準投与法群で高かった。 1日投与量の中央値は7.14mg/日(5.48-8.04mg/日)対9.15mg/日(8.33-9.52mg/日)で、代替投与法の方が標準投与法より22%少なかった。 代替投与法での全生存期間は標準用量に対して非劣性を示した(ハザード比0.83[0.69-1.003])。 今回の大規模解析は、非小細胞肺癌おけるペムブロリズマブ低用量投与法が、治療費を削減しつつ治療効果を維持するという仮説を支持するものである。

感想
一時期ほど免疫療法亡国論は言われなくなりましたが、コストの問題は依然として大きく残っています。今回はペムブロリズマブを節約したらどうなるかという検討で、決してメーカーが実施しない研究です。そもそもペムブロリズマブの用量は第1相試験でDLTはなく厳密に決められた量ではありません。今回採用された代替用量は、3週毎の場合体重65㎏未満で100㎎/body、65-95㎏で150㎎/bodyです。結果としては1日あたりに直すと約2割減量となっています。ランダム化試験ではありませんが、合併症の数以外(標準投与の方が合併症5以上が多い)の背景も大きな差は見られません。結果としてOSは減量した方が上回っており、ハザード比は0.83でした。減量すれば多少悪くて当たり前に思えますが、数字としてはむしろ良くなっています。生存曲線は交差することなく常に減量群が上回っていました。OSに関する多変量解析を見ますと、性別ではハザード比1.34と性差がありますが(どちらが悪いのかは読み取れません)、合併症5以上でも0.96と大差はありませんでした。過去にはニボルマブの低用量(20または100㎎/3w)の小規模の報告があります[Yoo HS ESMOopen2018 PMID:30094065]。そこでもむしろ低用量の方が良い結果でした。逆に明らかな差はないものの低用量が良くないように見える研究もあります[Chang KC Cancers2022 PMID:35267465]。今回取り上げた研究も含めて、低用量の研究は厳密なランダム化試験ではないため、参考程度に過ぎません。しかし少なくとも低用量が明らかに悪いということはなさそうです。であればリスクのある人に減量投与を考えることは決して悪くありません。とは言え現実には固定量がほとんどですので、間隔を開けるくらいしか対処法がないかもしれません。