免疫チェックポイント阻害薬により生存利益があるのは喫煙者のみ?

Predictors of Survival Benefit From Immune Checkpoint Inhibitors in Patients With Advanced Non-small-cell Lung Cancer: A Systematic Review and Meta-analysis.

Raphael J et al.
Clin Lung Cancer. 2020 Mar;21(2):106-113.
PMID: 31992521

ランダム化試験の結果によれば、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)における生存利益はPD-L1<1%、65歳以上、非喫煙者において異なる結果が得られている。これらのサブグループにおいてICI単剤の効果をシステマティックレビューしメタアナリシスを行った。PubMedおよびEMBASEでこれらのランダム化試験を検索し、9つの試験をもとにハザード比と全生存、無増悪生存期間をプール解析し逆重み付け法でメタアナリシスした。抗がん剤に比べて2次治療におけるICIはPD-L1発現と独立して死亡リスクを低下させていた(PD-L1陰性でハザード比0.79[0.66-0.96]、PD-L1陽性でハザード比0.75[0.61-0.88])。無増悪生存期間への利益はPD-L1陽性にのみ認められた。同様に年齢でも独立して死亡リスク低下していた(高齢者でハザード比0.79[0.69-0.89]、非高齢者でハザード比0.76[0.66-0.88])。一方全生存については喫煙者のみ認められ、非喫煙者における無増悪生存期間については有害な効果が認められた(ハザード比1.68[1.07-2.63])。本研究から進行非小細胞肺癌において、ICI単剤はPD-L1発現や年齢に関係なく、特に2次治療において生存利益が得られるが、非喫煙者ではそうではなかった。高齢者における初回治療のICIには注意が必要であり、非喫煙者には他の治療を検討する必要がある。

感想
治療ラインや薬剤は関係なくICI単剤のランダム化試験を統合してみたという結果です。PD-L1=50%以上で初回治療のPD-1阻害薬を使ったKEYNOTE024試験と、PD-L1状態を問わず再治療でPD-L1阻害薬を使ったPOPLAR試験を統合していいのかどうかはさておき、ICI全体の大きな方向性を見るデータとしては役に立ちます。本文ではまずPD-L1陰性(1%未満)、陽性についてフォレストプロットが示されています。染色方法など違いは突っ込まないこととしてみてみると、生存期間についてはPD-L1statusで差があまりないようです。PFSはPD-L1陰性の方が悪く見えますが大差はなさそうです。年齢は65歳以下、65歳より上で区切られています。しかしこれも生存期間、PFSに大きな差はなさそうです。喫煙状況ではnever smokerでの全生存に与えるメリットがなく、初回治療、再治療ともに良いところが見出せません。PFSは逆に初回治療、再治療ともに有意に抗がん剤が良好であり、有害の可能性すらあります。
これまでICIのアウトカムの良好因子について年齢、PS、NLRなどさまざまに言われてきました。それが揺らぐわけではありませんが、状態のそろって比較的良好な臨床試験にエントリーできる患者さんで見た場合、最も影響していたのが喫煙状況であることを覚えておいて損はないでしょう。