化学放射線治療後のオシメルチニブ

Osimertinib after Chemoradiotherapy in Stage III EGFR-Mutated NSCLC.

Lu S et al.
N Engl J Med. 2024 Jun 2.Epub ahead of print.
PMID:38828946.

Abs of abs.
オシメルチニブは、EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺癌に対する推奨された治療法であり、術後補助療法でもある。EGFR-TKIは、切除不能Ⅲ期症例に対しても有効な可能性を示している。今回の第Ⅲ相二重盲検プラセボ対照試験は、切除不能EGFR遺伝子変異陽性Ⅲ期非小細胞肺癌で化学放射線療法を行い病勢進行のない患者対象とした。病勢進行か治療継続が不可能になるまでオシメルチニブ、またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は独立判定された無増悪生存期間である。化学放射線療法を受けた216人が、オシメルチニブ投与群(143人)とプラセボ投与群(73人)に無作為に割り付けられた。無増悪生存期間中央値はオシメルチニブ投与群で39.1ヵ月、プラセボ投与群で5.6ヵ月であり、病勢進行または死亡のハザード比は0.16[0.10~0.24]、P<0.001)であった。12ヵ月時点での無増悪生存割合は、オシメルチニブで74%[65~80]、プラセボで22%[13~32]であった。中間生存解析(成熟度、20%)では、36ヵ月生存率はオシメルチニブ群で84%[75~89]、プラセボ群74%[57~85]であり、ハザード比0.81[0.42~1.56]、P = 0.53)であった。グレード3以上の有害事象は、オシメルチニブ群で35%、プラセボ群で12%に見られた。放射線肺臓炎(大多数がG1か2)は、それぞれ48%と38%であった。安全性の新規情報はなかった。切除不能なⅢ期EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌において、オシメルチニブによる治療はプラセボより有意に長い無増悪生存期間を示した。

感想
少し前に記事にした後ろ向き研究の、前向き試験版がASCO2024で発表、同時に出版されました。症例数は両群あわせて216人と少し少ないですが、ハザード比0.53で検出力90%で設定しており自信の程が伺えます。Fig1のPFS曲線がすべてですが、非常に大きく開いています。PACIFIC試験[Spigel DR JCO2022 PMID:35108059]のプラセボ群で12ヵ月PFS、24ヵ月PFSがそれぞれ34.5%、25.1%であるのに対して、EGFR変異対象の本試験は22%、13%とあまり良くないです。PACIFICの一部にEGFR遺伝子変異陽性が含まれているとは言え、化学放射線療法だけでは野生型に比べても治療不足と言わざるを得ません。オシメルチニブを入れればPFSが良いであろうことは類推できるのは当然として、問題は安全性です。致命的な有害事象は、オシメルチニブ群で3例(肺臓炎、肺炎、交通事故) とプラセボ群で2例 (3%) (心筋梗塞、大動脈瘤破裂) 起きています。間質性肺炎はオシメルチニブ群で11人(8%)に見られましたが、放射性肺臓炎としてはオシメルチニブ群で69人 (48%) とプラセボ群で28人 (38%) で報告されています。少ないと見ることも多いと見ることもできますが、ここは日本人での解析の結果を待ちたいと思います。術後補助療法の議論では、頭蓋内転移の抑制も議論されましたが、今回もオシメルチニブ群ではプラセボ群よりも新規脳転移の発生頻度が低く (8% 対 29%)、CNS転移の抑制効果が伺われます。サブグループ解析の19delとL858Rの比較では、ハザード比がそれぞれ0.17と0.32と19Delの効果が高く、65歳以上でハザード比0.33とやや悪い傾向にありました。症例数が全体的に少ないのでいずれのサブグループにも断定的なことは言いにくいです。化学放射線治療にしろ術後にしろEGFR遺伝子変異陽性であれば、早めにオシメルチニブを使っていくことになり、またEGFR/ALK陰性例はICIが使われていきますので、再発の際には、FACS研究の時代に逆戻りかも知れません。