Randomized Controlled Trial of a Nurse-Led Brief Behavioral Intervention for Dyspnea in Patients With Advanced Lung Cancer.
Greer JA et al.
J Clin Oncol. 2024 Oct 20;42(30):3570-3580.
PMID: 39088766
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肺癌患者において、呼吸困難は一般的で障害のある症状の一つであるが、有効な治療法がない。 今回は進行肺癌患者における呼吸困難の改善に対する看護師主導の短期行動介入の有効性を検討した。 少なくとも中等度の息苦しさを訴える進行肺癌患者(n=247)を、看護師主導の(呼吸法、体位、扇風機療法を中心とした)2セッション介入と通常ケアのランダム化試験に登録した。ベースライン時、8週後(主要評価項目)、16週後、24週後に呼吸困難([mMRCDS]、がん呼吸困難尺度[CDS])、QOL(肺癌患者用評価[FACT-L])、精神症状(病院不安・抑うつ尺度)、および活動レベルを測定した。 介入効果を検討するため、共分散分析および縦断的混合効果モデルを実施した。 対象集団(平均年齢66.15歳;女性55.9%)には主に進行非小細胞肺癌患者(85.4%)が含まれた。 通常ケアと比較して、介入は8週後で患者報告の呼吸困難mMRCDSを、主要アウトカムとして改善したが(差=-0.33[-0.61~-0.05])、CDS総スコアは改善しなかった。 また対照群に対して、CDSの不快感のサブスケールにおける呼吸困難がより少なく(差=-0.59[-1.16~-0.01])、FACT-Lによる機能的幸福感がより良好であった(差=1.39[0.18~2.59])。 8週間後と24週間後における縦断的観察では、QOL全体、精神症状、活動レベルにおいて試験群間差はみられなかった。本試験では進行肺癌患者において、発展性のある行動介入により呼吸困難という難治性の症状を緩和できた。 長期にわたる介入効果を強化する方法と、他の追加アウトカムに関してはさらなる研究が必要である。
感想
呼吸困難を訴える患者に対して、呼吸法や扇風機など非薬物療法の指導をしたら短期では症状緩和が得られました、という論文です。緩和ケアにしてもかなりの症例の規模であり、薬剤費がかからないこともあり今後積極的に勧められるかもしれません。ただいくつか弱点もあります。今回呼吸困難以外のスコアの改善はあまりなく、長期のQOLには影響を与えませんでした。つまりこの介入は呼吸困難の改善という幅の狭い効果に留まるということになります。実際に気分の悪い時に涼しい風で顔面を冷やすというのは多少なりとも効果はありますし、つらい時の対処の仕方を事前に学んでおくことは不安の解消につながります。しかしこれがプラセボ効果である可能性も否定できません。指導そのものはブラインドできないからです。熱烈な指導を受ければ、ホーソン効果;見られているという効果も出ているかも知れません。また手技そのものに真に意味があるのならば、コスト的にはビデオを見せるだけでも良いとも言えます。薬剤以外の手技についての研究は難しく、エンドポイントも立てにくいのが現状です。このように地味な研究ですが、ハーバード、MGHグループからの発信でありJCOに掲載されるのも既定路線の感じもします。なお参考文献によるとこの分野での日本人の貢献度は高く、呼吸療法、支持療法の面で多くの報告がなされていることがわかります。呼吸で苦しむというのは、結核や喘息の歴史も影を落としているのでは?とふと感じた次第です。