抗がん剤治療中でもCovid19ワクチンの効果は出るのか?

Efficacy of Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus-2 Vaccine in Patients With Thoracic Cancer: A Prospective Study Supporting a Third Dose in Patients With Minimal Serologic Response After Two Vaccine Doses.

Gounant V et al.
J Thorac Oncol. 2022 Feb;17(2):239-251
PMID:34798306

Abs of abs.
新型コロナウイルス感染症は、肺癌患者の死亡率30%を記録した。血清に関するSARS-CoV-2ワクチン登録試験では癌患者が除外されていることから、ワクチン接種後に抗スパイク抗体反応反応が出るどうかはよくわかっていない。この前向きワクチンモニタリング試験は、主に肺癌患者におけるSARS-CoV-2ワクチンに対する免疫応答を評価することを目的とした。SARS-CoV-2スパイク抗体は,BNT162b2 mRNAワクチンの初回注射前,4週後,2回目のワクチン投与から2~16週後に測定した.さらに抗体反応に関連する因子を解析した。年齢中央値67.0歳、306人の患者がワクチンを受けていた。このうち283名が28日間隔で2回目接種を受けていた。中央値にして6.7ヵ月の追跡調査の後、8人(2.6%)が有症状のSARS-CoV-2感染に罹患したが、経過良好であった。2回目のワクチン投与後14日目以降の抗体結果が得られた269例のうち,17例(6.3%)が依然として陰性であり,34例(11%)が低値にとどまっていた.多変量解析では年齢(p<0.01)と長期副腎皮質ホルモン治療(p=0.01)が免疫応答低下と有意に関連していた。30人の患者が3回目ワクチンを受け、うち3人の血清学的陰性が持続していたが,他の患者は陽転化した。今回の解析からSARS-CoV2ワクチンは肺癌患者において有効であり、2回の接種でほとんどの患者が免疫が得られることが確認された。低抗体価が続く患者の1%に3回目の接種を行い、88%の免疫率となった。

感想
初回ワクチン投与前(3か月以内)に受けていたのは化学療法(24.2%)で、そのうち単独投与(16.7%)、同時胸部放射線併用(n=2)、ICI併用(6.9%)でした。さらに免疫療法のみ(16%)ではTKI/ベバシズマブ維持療法(13.7%)であり、30.7%は過去3か月以内に治療が入っていません。つまり肺癌患者全体を見た数字となっています。特に抗S-IgG抗体価を見ると、1回目投与後と2回目投与後に有意に上昇し、より高い抗体価になることが見て取れます。特に図2は免疫療法でもしっかり抗体がつくことを示している良いデータです。また図3には2回目で低力価であるものが3回目を打てばかなり上がることを示しており、これも勇気づけられます。これらは非常にわかりやすく患者さん向けにも使えそうです。さて免疫力の低下に独立して関連する因子は年齢とステロイドの長期使用でした。特に80代以上が悪く、これまでの報告通りです。多変量解析のデータからすると有効免疫に到達する確率は年間5%減少すると換算されます。
オミクロン株激増しており、コロナ対応病院はひどいことになっています。私も通院患者から次々と陽性となっており、対応に追われる毎日です。連日テレビやネットで出される何々県何人とかは気になるものですが、そんなことを気にするより日々出されているCovid関連の論文を読むべきでしょう。現時点での治療薬のまとめはこのサイトのまとめが良かったです。また外来、重症化リスクのある人へパキロビッド(ニルマトレルビル/リトナビル)が認可されました。データはまだ製薬会社のホームページでしか知ることはできませんが、使う機会は多くなりそうです。