Durvalumab after radiotherapy in patients with unresectable stage III non-small-cell lung cancer ineligible for chemotherapy:the DUART phase II nonrandomized controlled study.
Filippi AR et al.
ESMO Open. 2025 Aug 20;10(9):Epub ahead of print.
PMID:40840233.
Abs of abs,
化学療法の対象とならない切除不能Ⅲ期非小細胞肺癌は放射線療法単独が施行されている。しかしその成績は満足のいくものではない。DUART試験は、このような集団で放射線療法後に増悪を認めなかった患者を対象とした、デュルバルマブの第Ⅱ相単群試験である。患者は放射線療法の線量(A:根治的、B:緩和的)ごとに並行コホートに登録され、デュルバルマブ(1500 mgを4週間ごとに最大12か月間)を投与された。主要評価項目は、デュルバルマブ開始後6か月以内のグレード3/4の治療関連有害事象(PRAE)の発生率であった。副次評価項目は奏効率、無増悪生存期間、全生存期間である。探索的循環腫瘍分析(ctDNA)には、標的メチル化アッセイが使用された。2023年12月6日において、102人の患者にデュルバルマブが投与された(コホートA:53人、コホートB:49人)。PS=0/1/2=18.8%/73.3%/7.9%、年齢中央値79.0歳であった。全体として、9.8% [4.8-17.3] が、デュルバルマブ投与開始から6か月以内にグレード3/4のPRAEを発症した。PFS中央値は 9.2か月、12か月生存率は39.6%であった。OS中央値は21.1 か月、12か月生存率は64.7%であった。サイクル1または7でctDNA陽性であった患者は、同時点でctDNA陰性であった患者と比較しPFSが短かった。放射線治療後のデュルバルマブの安全性プロファイルは、化学放射線療法後のデュルバルマブを評価したPACIFIC試験と一致した。各コホートにおける有効性は有望であった。一部の患者では、緩和的放射線治療後であってもデュルバルマブにより分子学的寛解を達成または維持できる可能性がある。放射線治療後のデュルバルマブは、フレイルな高齢患者や化学療法不適格患者において選択肢となり得る。
感想
時々遭遇する状況です。PS不良、腎機能低下などで抗がん剤は出来ないがN1止まりでSBRTではない根治照射可能といった症例があります。日常臨床ではさらにドライバー変異も測定しEGFR/ALKなど経口薬で治療できないかも検討すると思います。施設によってはdaily-CBDCAまで検討するかもしれませんが、一般的にはweekly-CBDCA+PACが併用できるかといったところでしょう。さてそのような症例に放射線単独をした後デュルバルマブによる地固めはできないか気になるところです。同じコンセプトの研究はすでに日本から報告されています[Yamada T EJC2023 PMID:37890349]が、今回は根治照射不能例(緩和照射)も含まれ毒性を中心に検討されています。治療強度としては平均9回(1~13回)のデュルバルマブを投与され、途中PDも考慮すると普通に行けるという印象です。有害事象として多いのは咳(20.6%)、脱力感(20.6%)、貧血(18.6%)、呼吸困難(18.6%)、発熱(16.7%)で、グレード3/4は肺炎5人(4.9%)、心不全4人(3.9%)、貧血、呼吸困難、肝毒性各3人(2.9%)でした。 7人(6.9%) に致命的なAEがあり、2人(2.0%) が「原因不明の死亡」、1人(1.0%)が心不全、脳虚血、肺炎 (PRAE)、肺塞栓症、肺出血とされています。全体的にフレイル患者であることから妥当な水準と思われます。今回もっとも見たかった主要評価項目は平たく言えば6ヶ月以内のグレード3以上のirAEです。これは10人(9.8%)に発症し、掻痒感、甲状腺機能低下、脱力感、甲状腺機能亢進症が主なものでした。十分に許容範囲と言えると思います。
さて生存アウトカムについては非常に評価が難しいです。まず比較対象となるフレイル患者での放射線単独の治療データが、あまり更新されていません。少々古いですがJCOG0301[Atagi S LancetOncol2012 PMID:22622008]の放射線単独群のOSが16.9ヶ月なので、患者選択、起点の差を考えても悪くはなさそうとしか言えません。前述の日本の研究でもOSが20.8ヶ月なので同じく悪くはないと言えます。このように全生存期間の評価がしにくい研究では、今回の研究のように毒性を見て「できそうかどうか」を評価するのも実地臨床での重要な視点と考えます。