4つのPD-L1抗体比較、微妙だが無視できない差がある

Comparison of Four PD-L1 Immunohistochemical Assays in Lung Cancer.

Hendry S et al.
J Thorac Oncol. 2018 Mar;13(3):367-376.
PMID: 29175115

Abs of abs.
4つの異なるPD-L1免疫組織染色が、肺癌における免疫療法薬に対するコンパニオンまたはコンプレメンタリー診断薬として承認されているか、開発中である。今回はこれらが技術的に同等か、さらに1つの抗体で他の代替使用が可能どうかを調べた。22C3および28-8については、Dako Link 48プラットフォーム(Dako)を使い、SP142およびSP263はVentana Benchmark Ultraプラットフォーム(Ventana Medical Systems)を製品説明書に従って厳密に使用した。対象検体は切除肺癌368症例で組織マイクロアレイの連続切片を使用した。またVentana Benchmark Ultraプラットフォームで22C3抗体を使用する方法を開発した。腫瘍細胞および免疫細胞の平均での染色の差異が4つのアッセイ間で観察された(p<0.001)。22C3と28-8の差は統計学的有意ではなかった。特にSP142を外れ値(ICC = 0.755)として除外した場合、腫瘍細胞スコアの一致は良好であった(クラス内相関係数[ICC]=0.674)。最高一致度は22C3と28-8との間に見られた(ICC=0.812)。免疫細胞染色では一致がみられなかった(ICC=0.212)。臨床的に信用しうるカットオフ値で二分割し対にして比較すると、弱い~中等度の一致(κ= 0.196-0.578)を示し、一致率は15.1%~90.0%であった。Dako Link 48プラットフォームでの22C3抗体は、Ventana Benchmark Ultraプラットフォームで代替しても同等に機能した(ICC = 0.921、κ= 0.897)。本研究により規定通り実施、評価した場合の4つのPD-L1免疫組織染色は、28-8および22C3の間を除き、臨床実地において互換できないことが示された。22C3については別のプラットフォームで使用するための方法が開発できた。これは検査実施の障害を克服するのに役立つものである。

感想
各種PD-L1の染色の比較検討は、BLUEPRINT試験[Hirsch FR JTO2017 PMID:27913228]が良く引用されます。今回はさら厳密な比較を行うため外科切除検体から組織マイクロアレイ用に切り出した腫瘍部分の検体を使用しています。まもなく3つ目の免疫チェックポイント阻害薬が使用可能になります。使用条件の詳細はまだ完全には明らかになっていませんが、アテゾリズマブの場合、SP142染色が必要になるかは今後も関心がもたれます。適正使用の観点とおそらく医療費抑制の観点から、これらのコンパニオン診断薬あるいはコンプレメンタリー診断薬は、今後厳しくなることはあっても緩くなることはないと思われます。復習になりますが、コンパニオン診断薬とは、患者選択に必須となるのに対し、コンプレメンタリー診断薬は必須ではないものの有用な情報を与える診断薬のことです(肺癌学会バイオマーカー委員会 肺癌患者におけるPD-L1染色の手引きより)。ご存知の通り、ペムブロリズマブに対しては22C3がコンパニオン診断薬ですが、22-8はニボルマブに対するコンプリメンタリー診断薬です。実際にこの4種を鏡検したことはなくとも、代表例としてFig1に同じ検体での4種の染め分けが掲載されており実感することができます。これを遠目で眺めると、従来言われてきた通りSP142の染色性は悪く思えますし、SP263は若干染まり方が良いのかなと思えます。また4抗体での腫瘍側のPD-L1発現評価と免疫細胞側の発現評価を細かく行い、その一致度についてもカットオフを変え細かく報告されています。今回の研究はTable1に集約されており、それによると腫瘍側染色の1%をカットオフとした時、22C3、28-8、SP142、SP263はそれぞれ23.9%、25.9%、13.2%、34.6%陽性となり少し差が出ています。しかし50%をカットオフとしたとき、SP142は3.9%ですが、そのほかの3抗体は9-11.8%と狭い範囲でほぼ一致します。要は染色割合が低いところで、SP263の感度が高くなりますが、50%以上と高いところではSP142が感度が悪い以外はあまり変わらないことになります。時間経過については4年前の検体と新鮮検体で比較したところ、50%カットオフとした22C3で、陽性率が3.7%対8.2%、25%をカットオフとしたSP263で3.3%対25%と差が見られたことも書かれています。また22C8と22-8はダコ社の指定する染色機を使わなくてはなりませんが、それが別会社(今回はベンタナ社)のものでも代用できないかということも試され、可能であるとの結論でした。これから増える一方の免疫染色に対応する染色機を、その都度入れていける施設はごく限られます。このような検討はより多くしてもらえると助かります。いずれかの一つのPD-L1抗体で相互読み替えができることが理想ですが、そのハードルはなかなか高そうです。このように少しづつPD-L1染色の解明が進みつつも更なる問題点が発生する状況を、エディトリアルでは”Two step forward, One step back”と評しています。