Evolution of the Randomized Clinical Trial in the Era of Precision Oncology.
Del Paggio JC et al.
JAMA Oncol. 2021 Mar 25. Epub ahead of print.
PMID:33764385.
Abs of abs.
オンコロジー領域のRCTにおける現在の傾向を調べ、初期のデザインと結果の違いを比較することを目的に研究を行った。2010年から2020年の間に主要7誌に掲載された乳癌、大腸癌、非小細胞肺癌における全身療法のRCTを対象とした後ろ向きコホート研究を行った。このやり方で先行研究を見直し、1995年から2004年に発表されたRCTと2005年から2009年に発表されたRCTとの傾向を比較することが可能となる。資金、結果、報告に関するデータを、発表されたRCT報告から抽出した。現在の期間(2010年~2020年)の知見を、1995年~2004年および2005年~2009年に発表されたRCTのデータと比較した。記述統計学および二変量統計学を用いて、時間的な傾向を分析した。研究コホートには、298件のRCTが含まれた(132 [44%] 乳癌、111 [37%] 非小細胞肺癌、55 [19%] 大腸癌)。試験治療として、分子阻害薬(298件中171件[57%])、殺細胞製剤(298件中83件[28%])、ホルモン療法(298件中15件[5%])、免疫療法(298件中24件[8%])が含まれていた。またRCTの69%(298件中206件)が緩和目的であった。現在、最も一般的な主要評価項目はPFSであり、これは時間の経過とともに大幅に増加している(0%[167分の0]→18%[137分の25]→42%[298分の125]、P < 0.001)。現在の298件のRCTのうち、265件(89%)が企業からの資金提供を受けている(以前は167件中95件(57%)、137件中107件(78%)、P<0.001)。主要評価項目の達成は58%(298件中173件)であった。結果がpositiveな試験では、全生存期間とPFSの中央値がそれぞれ 3.4ヶ月と 2.9ヶ月改善していた。報告の3分の1以上(298件中117件[39%])が専門のメディカルライターを使用しており、この割合は研究期間中に大幅に増加した(2010年の27件中3件[11%]から、2020年の18件中12件[67%]、P<0.001)。
今回のコホート研究から、現代のオンコロジー領域のRCTは、主に推定される代替エンドポイントを測定するものであり、製薬企業からの資金提供がほとんどであることを示唆している。メディカルライターの役割が増大していることは注目に値する。新しい癌治療が価値があることを示すには、オンコロジー界隈にて、研究のエンドポイントと目標とする効果の大きさが患者に意味のある利益をもたらすかどうかを熟慮すべきである。
感想
主要なポイントはすべて要約に出ていますが、ポイントはエンドポイントとしてのPFSの多用、ほとんどが製薬会社の資金、メディカルライターの使用が多いという点です。PFSは実際、OSを見たくとも生存期間が長くなってきて不可能という面もあります。ただ資金が入った研究が増えるにつれ、PFSをエンドポイントとした研究が増えているのは注目すべきポイントになるかと思います。資金面については、新薬はともかくとして、臨床研究法実施後に完全な医学的興味に基づくランダム化試験を、臨床医が片手間にやることは事実上不可能です。JCOGなどの臨床試験グループでも多かれ少なかれメーカーからの資金が入っていることが殆どです。残されているのは後ろ向きに調べていくことですが、これも誰もが興味を持つ問題であると、事実上丸抱えと思われるものもあります。メディカルライターについても報酬は当然製薬企業から出ているわけで、ニュアンスは企業の意向に沿ったものとなるでしょう。そこに仮に社運をかけたような臨床試験が意に沿わない結果の場合、壮大な「いいところ探し」が始まるのは想像に難くありません。論文ですらそういう事情なのですから、私たちはメーカー主催の講演会などを聞く際にはよくよく気をつけなければなりません。例えば先日ご紹介した9LA試験では結果の生存曲線が2つ載っていますが、本文に書いたように、どちらを出すかによってどこまで厳しく臨床試験を見ているかがわかるかも知れません。