末梢小型肺癌は細かく考える

Risk Factors for Locoregional Relapse After Segmentectomy:Supplementary Analysis of the JCOG0802/WJOG4607L Trial.

Nakagawa K et al.
J Thorac Oncol. 2025 Feb;20(2):157-166.
PMID:39395662.

Abs of abs,
JCOG0802/WJOG4607L試験により、末梢小型肺癌に対する区域切除は肺葉切除と比較して全生存期間が優れていることが明らかになった。それにもかかわらず、局所再発(LR)は区域切除の大きな問題である。事後補足解析では、原発腫瘍部位に応じた局所再発のリスク因子と区域切除の利点を明らかにすることを目的とした。2009年8月10日から2014年10月21日まで、日本における多施設共同・群間非盲検第3相ランダム化比較試験の参加者を登録した。区域切除後の局所再発のリスク因子および原発部位との臨床的特徴を調査した。1105例中、肺葉切除術は576例、区域切除術は529例であった。区域切除の原発部位は、左上葉、左舌区、左S6、左底区、右上葉、右S6、右底区であった。多変量解析では区域切除群における、薄切CTでのpure-solid(オッズ比3.230[1.559-6.690];p=0.0016)、腫瘍径より小さいマージン(オッズ比2.682[1.350-5.331];p=0.0049)、男性(オッズ比2.089[1.047-4.169];p=0.0366)が局所再発と有意に関連していることが明らかになった。左舌区腫瘍(オッズ比4.815[1.580-14.672])は、有意ではないが左上葉腫瘍よりも局所再発の頻度が高い傾向があった。本研究より薄切CT所見とマージン距離は、分割切除術における局所再発を回避するための重要な因子である。

感想
区域切除が一律に肺葉切除に優れるわけではなく、なお議論が必要と考えさせられる結果です。要約にある通り重要なことは①CTでのpure solid所見、②少ないマージン距離は局所再発のリスクになるという点です。①についてはあまり考察されていませんが、おそらくGGNから発展したものと生物学的特徴が違うのでしょう。②については外科医の視点でさまざまな考察がなされています。外科医にとっては常識なのかもしれませんが、右底区域切除は比較的難しく、手術時間延長、出血量に影響すること、またS6はマージンも取りにくいとのことです。Table3では区域切除部位別のマージンが記載されています。腫瘍サイズとの差もあるので一概に言えませんが、中央値で左S6が20㎜、左上区で30㎜と差がありそうです。またS6は解剖学的に中枢への距離が近いことを一因と考える向きもあるようです。著者らは最後に、左舌区、左S6、左底区における区域切除は細心の注意を払い、右上葉の区域切除ではマージンに特に気を使い、区域切除は部位やCT所見を考慮して決定すべきと述べています。肺癌学会ガイドラインにもこの辺りが反映されており、充実性結節の70歳未満、女性に関しては肺葉切除が無再発生存において上回ったことが取り上げられ「臨床病期ⅠA1-2期,充実径比>0.5に対して,区域切除または肺葉切除を行うよう強く推奨する」とされています。普段、進行肺癌を中心に見ている私にとっては新鮮なものの見方であり大変勉強になった研究でした。