Compound mutationの存在がオシメルチニブの効果を減弱する

Complex EGFR mutations with secondary T790M mutation confer shorter osimertinib progression-free survival and overall survival in advanced non-small cell lung cancer.

Lin YT et al.
Lung Cancer. 2020 Jul;145:1-9.
PMID:32387812.

Abs of abs.
オシメルチニブはEGFR-T790M変異陽性の非小細胞肺癌に効果を持つ。しかしT790Mとcomlex-EGFR変異の共存例に対する有効性は評価されていない。Complex-EGFR変異を検出するために、RNAをRT-PCRすることで連続的に組織のシークエンスを行った。EGFR遺伝子変異陽性かつ2次変異としてT790Mを持ち、オシメルチニブを投与された進行非小細胞肺癌患者が登録された。患者背景、治療歴、オシメルチニブ治療のアウトカムを分析した。全体で連続165人を解析した。うち11人(7%)にT790Mとのcomplex-EGFR変異が存在した。それらに対するオシメルチニブの奏効率は27%であった。またこれらは単一のEGFR遺伝子変異+T790Mを有する患者よりも無増悪生存期間(PFS)(2.9ヶ月 vs. 9.7ヶ月、p<0.001)および全生存期間(OS)(17.8ヶ月 vs. 31.0ヶ月、p=0.01)が短縮していた。オシメルチニブ治療後、7人の患者が再生検を受け、さらに解析された。4人はT790M喪失、2人は小細胞肺癌への転化、1人はC797Sを獲得していた。さらに中央値で分けた場合、以前のEGFR-TKIの治療期間が短い患者で、オシメルチニブのPFS(7.3 vs.13.8ヶ月、p<0.001)およびOS(21.5ヶ月 vs. 36.7ヶ月、p=0.003)が短縮していた。Cox回帰ではcomplex-EGFR変異の存在と、前TKI治療期間がオシメルチニブのPFSとOSと関連していた。本研究からcomplex-EGFR変異と以前のEGFR-TKI治療期間が短いと、2次性のT790M変異へのオシメルチニブのPFSとOSが短くなる可能性があると考えられる。

感想
Compound mutation(本文ではcomplex mutation)とは、EGFR遺伝子変異(Del19,L858R,G719,L861)と共存するEGFRチロシンキナーゼドメイン内の様々な変異のことであり、major+uncommonもCompoundの扱いがされているようです[Kobayashi S JTO2013 PMID:23242437]。Compound mutationへの活性はTKIによって違うようであり、詳しくはよく引用される有名な報告[Kohsaka S SciTranslMed2017 PMID:29141884.]にTKI別の薬効評価がなされています。
今回のCompound mutationを含むT790M陽性のオシメルチニブの奏効率は27%と低く、PFS曲線も明らかにcompoundなしと違って悪くなっています(Fig1C)。ただこれらの前治療TKIの治療期間は5.8-70ヶ月(中央値12.4ヶ月)なので、もともとあるcompound mutationだけでは説明が付きにくいと思います。言い換えれば腫瘍の壊し方にもその後の差がつく可能性があることになります。
日常臨床でも再生検によりT790Mが出ても、何故かオシメルチニブが効かない症例に遭遇します。今までは不均一性に由来することと思っていましたが、このデータをみるとcompound mutationの方に理由を求めた方が良いのかも知れません。