次世代KRAS G12C阻害薬ジバラシブ

Divarasib as Compared with Sotorasib or Adagrasib in KRAS G12C-Mutated NSCLC.

Skoulidis F et al.
N Engl J Med. 2026 Oct 25. Online ahead of print.
PMID:42929675.

Abs of abs,
ジバラシブは次世代の経口KRAS G12C阻害薬であり第1世代のKRAS G12C阻害薬であるソトラシブやアダグラシブよりも強力で高選択性である。国際共同第Ⅲ相非盲検試験として行われ、既治療のKRAS G12C変異陽性進行転移非小細胞肺癌患者を、ジバラシブ群と対照群に無作為に割り付けた。ジバラシブ群は400mgを1日1回経口投与した。対照群はソトラシブ960mgを1日1回、またはアダグラシブ600mgを1日2回経口投与した。投与は病勢進行、許容できない有害事象、臨床的有益性の消失、同意撤回、死亡、または試験終了まで継続した。主要評価項目は中央判定による無増悪生存期間とした。副次評価項目は全生存期間、奏効率、奏効期間、患者報告アウトカム、安全性とした。計338例が登録され、ジバラシブ群は167例、対照群は171例(ソトラシブ156例、アダグラシブ15例)であった。追跡期間中央値は14.3ヶ月であった。無増悪生存期間中央値はジバラシブ群で9.8ヶ月、対照群で5.7ヶ月であった(ハザード比0.58[0.44-0.76];P<0.001)。全生存期間中央値はジバラシブ群で17.7ヶ月、対照群で12.0ヶ月であった(ハザード比0.56[0.41-0.78];P<0.001)。328例で効果判定が可能であり、それぞれジバラシブ群で58.4%、対照群で32.3%の奏効率であった。奏効期間中央値はジバラシブ群で11.9ヶ月、対照群で6.9ヶ月であった。グレード3または4の治療関連有害事象は、ジバラシブ群が24.6%で、対照群の34.5%より少なかった。既治療のKRAS G12C変異陽性進行転移非小細胞肺癌患者において、ジバラシブは有意に無増悪生存期間と全生存期間を延長した。

感想
ドライバー変異と分かっていながら長らく薬のなかったKRASに、G12C変異限定とは言えソトラシブが奏効したのは画期的でした。しかしそのPFSは半年程度で、EGFR/ALK阻害薬ほどの持続期間は維持できず、改良が課題でした。そこに登場したのが次世代のジバラシブで、前臨床ではソトラシブの12から100倍以上、アダグラシブの6から20倍の効力を示し、選択性も高くなっています。第1相試験では奏効率59%、PFS中央値15.3ヶ月という明らかに優れた結果でした。それを受けた今回の試験は、90%の検出力でPFSハザード比0.64(対照群7ヶ月、ジバラシブ群10.9ヶ月)を検出できるよう設計されています。分子標的治療薬同士の対決ですが、勝てる見込みがかなりあったのと、絶対に差を証明したかったのだと思います。結果は期待通り、PFS 9.8ヶ月対5.7ヶ月(ハザード比0.58)で、12ヶ月PFS率も43.9%対24.0%とほぼダブルスコアの勝利です。第1相のPFS 15.3ヶ月と比べると今回の9.8ヶ月は短く見えます。ジバラシブ群・対照群とも想定(10.9ヶ月、7ヶ月)をやや下回りましたが、ハザード比はほぼ想定どおりで、対照群のPFSもCodeBreaK 200のソトラシブ群(5.6ヶ月)と同等です。ソトラシブより効果が高いことは確実でしょう。
インパクトが大きいのは全生存期間で、ハザード比0.56、12ヶ月生存率も67.1%対49.2%でした。肺癌のKRAS G12C阻害薬のランダム化試験としてOS延長が示されたのは大きな成果です。中身ですが、PFSハザード比が0.58、OSハザード比が0.56で、ジバラシブでついた差がOSにそのまま翻訳されています。つまり、ここで強力にG12Cを抑えることの効果がその後に持ち越されている可能性がある点も重要です。これはMARIPOSA試験を取り上げたときにも言及しました。分子標的薬では一般にOSのハザード比がPFSより大きくなる(差が薄まる)傾向があり、この点は注目に値します。その差が小さいのは最近の強力な分子標的薬に出始めた傾向であり、ドライバーを強力に阻害すると本当に持ち越し効果があるのかもしれません。ただし、クロスオーバーが許されておらず、OSもまだ中間解析の段階であることは考慮が必要です。安全性ではジバラシブ群で明らかに消化器毒性が多く、5-HT3受容体拮抗薬やデキサメタゾンの予防投与が望ましいかもしれません。一方、肝毒性はジバラシブ群のほうが少なく、ソトラシブではICI直後に肝障害が起きやすいことが知られているため、使い分けの一助になりそうです。肝毒性が少ないことは、将来的な免疫療法との併用にも希望を与えます。またKEAP1遺伝子変異があるものについても、ジバラシブはPFS、OSとも良い傾向にあったようです。PD-L1発現にかかわらず効果が一貫していた点も良い点かと思います。G12Cが汎RAS阻害のダラクソンラシブに置き換わるのか、すみ分けるのかも興味深いポイントです。