肉腫様癌にはICI効果が高い?

Efficacy of Immune Checkpoint Inhibitors in Lung Sarcomatoid Carcinoma.

Domblides C et al.
J Thorac Oncol. 2020 May;15(5):860-866.
PMID:31991225

Abs of abs.
免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は癌の予後を改善したが、稀なサブタイプで予後不良の肉腫様癌については十分検討されていない。今回はこれらの集団に対して後ろ向き解析を行った。2011-2017年において中央判定で確認できた肉腫様癌で、2次治療以降にICI治療がなされた連続症例を解析した。PD-L1発現はSP263による免疫染色で評価し、Foundation OneパネルによるTMB評価を行った。TMB高値はメガベース当たり10変異以上のものとした。37例の肉腫様癌が対象となり、背景は年齢中央値63.2歳、喫煙者は94.6%であった。ICIの治療ラインは2次治療が54%、3次治療以降が46%であった。奏効率は40.5%で、病勢制御率は64.8%であった。生存期間中央値は12.7ヶ月、1/3では早期進行が見られた。PD-L1発現中央値は70%で、PD-L1陽性例で58.8%の奏効、陰性例は1人であるが反応は見られず、PD-L1発現が高いほど反応するようであった。TMBの中央値は18/メガベースで87.5%がTMB高値を示していた。これも奏効例対非奏効例で比較するとTMB高値の方が奏効例が多い傾向にあった。今回の結果から、肉腫様癌はICI治療に奏効率が高く、生存延長が得られることが示された。そして初回治療でICIを行っている集団を前向きに調べていくことを支持することとなる。

感想
Sarcomatoid Carcinomaとは肉腫様癌と訳され、2015年WHO分類において、多形癌、紡錘細胞癌、巨細胞癌、癌肉腫、肺芽腫を含む分類です。稀な腫瘍であることは事実で、本研究は42の施設に声かけをして、27施設37例が登録されています。2次治療以降のICIが対象ですが、すべての患者で初回プラチナベースの治療がされています。初回レジメン選択も難しく、非扁平上皮癌非小細胞肺癌として考える施設もあるでしょう。そのためタキサン系が40.6%で選択され、ペメトレキセドも37.8%と上位を占めています。ICIは86.5%でニボルマブが選択され、投与中央サイクル数は10、無増悪生存期間中央値は4.89ヶ月と全体としてやや良さそうに見えます。PD-L1とTMBについて検討されていますが、PD-L1が評価できたのは19例、TMBに至ってはわずか8例のため何か言える状態ではないと思います。また1/3で早期PDが見られています。この患者群ではPS不良例が多い以外には特徴が見出せませんでした。それでも従来の再治療の臨床試験と比較して成績が良さそうなので、著者らは肉腫様癌はICI治療の”very good candidates”と述べています。理由として考えられるのは、肉腫様癌に喫煙者が多いこと、PD-L1高発現が多いこと、CD8陽性T細胞浸潤が多いことを挙げています。これらの背景があれば、初回治療での複合免疫療法を議論せねばなりません。抗がん剤選択としてペメトレキセドが適切かは議論が必要ですが、CBDCA+PAC/nabPAC+ペムブロリズマブ/アテゾリズマブなどの使用での結果が期待されるところと思います。