術後補助化学療法としてのオシメルチニブ

Osimertinib in Resected EGFR-Mutated Non-Small-Cell
Lung Cancer.

Wu YL et al.
N Engl J Med. 2020 Sep 19.
PMID:32955177.

Abs of abs.
オシメルチニブは、EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺癌(NSCLC)に対する標準治療である。オシメルチニブの術後補助化学療法としての有効性と安全性は不明である。今回の二重盲検第Ⅲ相試験では、完全切除されたEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌患者を1:1 で無作為割り付けし、オシメルチニブ(80㎎/day)またはプラセボを3年間投与した。プライマリーエンドポイントは、Ⅱ-ⅢA期における主治医評価による無再発生存期間である。副次的エンドポイントには、IB期からⅢA期の無再発生存期間、全生存期間、安全性である。682例が無作為割り付けされ(オシメルチニブ群339例、プラセボ群343例)。24ヵ月時点で、オシメルチニブ群ではⅡ-ⅢA期の患者の90%[84-93]、プラセボ群では44%[37-51]が生存かつ無再発であった(ハザード比0.17[0.11-0.26];P<0.001)。全体では、オシメルチニブ群では 89%[85-92]、プラセボ群では 52%[46-58]の患者が24ヶ月生存し、無再発であった(ハザード比0.20[0.14-0.30];P<0.001)。また24ヵ月目の時点で、オシメルチニブ群の98%[95~99]およびプラセボ群の85%[80-89]の患者は生存しており、中枢神経転移がなかった(ハザード比0.18[0.10-0.33])。29例(オシメルチニブ群9例、プラセボ群20例)が死亡しているが生存期間データは未成熟である。新たな安全性に関する情報はなかった。本研究からステージIB-ⅢAのEGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者において、無再発生存期間はオシメルチニブ投与群の方がプラセボ投与群よりも有意に長かった。

感想
ADAURA試験の結果です。術後補助化学療法としてのオシメルチニブの効果を見た試験で、プライマリーエンドポイントはⅡ-ⅢA期における主治医評価による無再発生存期間です。無再発生存期間が全生存期間の代替マーカーとなるかはわかりませんが、EGFR遺伝子変異陽性例の予後がかなり長くなっていることからこのカテゴリーの一応の決着がついたと思います。
以前取り上げたCTONG試験[Zhong WZ Lancet Oncol2017 PMID:29174310]ではゲフィチニブとシスプラチン+ビノレルビンの比較を行い、無再発生存期間は28.7ヶ月 vs 18.0ヶ月でハザード比0.60[0.42-0.87]でした。今回コントロール群にプラセボが投与されているのはどうかと思うものの、ハザード比0.17は圧倒的です。生存曲線上は、30ヶ月の時点でも9割弱の人が無再発生存であり、ゲフィチニブよりはるかに強そうです。また中枢神経系の転移を抑え込めるのも魅力的であり、コストを別にすれば積極的に投与したいところです。また基本的には術後より術前の方が期待できるので、引き続き行われているNeoADAURAにも期待してしまいます。
さて今回のオシメルチニブ群の中断率は11%でした。3年という期間を考えると低いと思いますが、これが保険適用となった場合、肺臓炎の問題もさることながら、3年完遂できる人は意外に少ないかもしれません。治療が長くなってきて副作用がなく指標もないと、抗がん剤であること自体を忘れてしまったり、勝手にやめていたりと別の問題が起こってくる場合があります。術後補助化学療法では患者さんが止めたいと言ってきた場合、進行癌の場合と違った難しさがあるように感じています。