Randomized Phase III Study of Pemetrexed Plus Cisplatin Versus Vinorelbine Plus Cisplatin for Completely Resected Stage II to IIIA Nonsquamous Non-Small-Cell Lung Cancer.
Kenmotsu H et al.
J Clin Oncol.2020 Jul 1;38(19):2187-2196.
PMID:32407216.
Abs of abs.
病理学的stageⅡ-ⅢAの非扁平上皮非小細胞肺癌(NSCLC)に対する術後補助化学療法として、ペメトレキセド+シスプラチン対ビノレルビン+シスプラチンの有効性を評価した。日本の50施設で、無作為非盲検の第Ⅲ相試験を実施した。病理学的stageⅡ-ⅢA(TNM第7版)の非扁平上皮非小細胞癌の完全切除例を対象に、ペメトレキセド(500mg/㎡、day1)+シスプラチン(75mg/㎡、day1)またはビノレルビン(25mg/㎡、day1,8)+シスプラチン(80mg/㎡、day1)かに割り付けた。層別化因子は性別、年齢、病理学的病期、EGFR遺伝子変異、施設であった。これらの治療は3週間毎に4サイクル投与され、プライマリーエンドポイントは無再発生存期間であった。2012年-2016年に804人の患者が登録された(ビノレルビン+シスプラチンに402人、ペメトレキセド+シスプラチン402人)。784人の適格患者のうち、410人(52%)がstageⅢAで、192人(24%)がEGFR遺伝子変異を有していた。追跡期間中央値は45.2か月で、無再発生存期間中央値は、ビノレルビン+シスプラチンで37.3ヶ月、ペメトレキセド+シスプラチンで38.9ヶ月、ハザード比0.98[0.81〜1.20]、片側P=0.474であった。グレード3、4の毒性は、ビノレルビン+シスプラチンで多く報告され、内訳は発熱性好中球減少(11.6%対0.3%)、好中球減少(81.1%対22.7%)、貧血(9.3%対2.8%)であった。治療関連死は各群1件ずつ見られた。本研究では、非扁平上皮非小細胞肺癌に対するペメトレキセド+シスプラチンの優位性を示すことはできなかったものの、このレジメンは術後補助化学療法としてのよりよい忍容性示した。
感想
昨年のASCOで発表されたデータです。当初全生存期間をエンドポイントとしていましたがイベント数が少なく、全生存の代替マーカーである無再発生存をエンドポイントとして設定し直しています。設定では5年生存率が試験群で50%と見積もられましたが、結果は6年でも中央値に到達していません。これは設定が間違っていたのではなく、この間の内科外科の治療進歩、さらに診断技術の向上により臨床試験が追い付いて行かないという典型かと思います。無再発生存ですら5年で40%程度あり、免疫療法などの内科治療以外の進歩を裏付けていると思います。数字で示されている3年無再発生存率はビノレルビン群で50.2%、ペメトレキセド群で51.1%でした。層別化因子となっているEGFR遺伝子変異のサブグループ解析で、wild-typeでは無再発生存においてペメトレキセド群がよく、mutantでは逆にビノレルビンが良好な傾向となり理解に苦しみます。臨床的にEGFR遺伝子変異陽性で特にペメトレキセドが悪いという印象はありませんし、大規模な後ろ向き解析もないので偶然か、何らかの背景の偏りの可能性があるかと思います。
シスプラチン+ビノレルビンは骨髄抑制も強くまた有害事象も多いため、もはや古いレジメンであることは皆感じるところでしょう。今回の4サイクル完遂率は、ビノレルビンで72.7%、ペメトレキセドで87.9%でした。日常臨床ではビノレルビン+シスプラチンは半分強くらいの完遂率のような印象です。今後ペメトレキセド+シスプラチン、もっと言えば、ペメトレキセド+カルボプラチンが術後補助化学療法として使えれば、と思う向きは多いでしょう。しかしエビデンスと保険診療の支配下にある我々は、従来通り術後補助化学療法を標準治療として勧め続けねばなりません。これを変えるにはneo-adjuvantのエビデンスを確立していくことであり、それしかシスプラチン+ビノレルビンの呪縛から逃れる手段はないでしょう。また今回ペメトレキセドはLess ToxicなのだからP値をうまく割り振って非劣勢の検定も行うようにしていれば…とも思いますが、それだと症例数が倍くらい必要でしょう。昨年発表されたデータですが、今回見返してみても非常に残念な結果であったと感じます。