A Phase 2 Study of Atezolizumab for Pretreated NSCLC With Idiopathic Interstitial Pneumonitis.
Ikeda S et al.
J Thorac Oncol. 2020 Dec;15(12):1935-1942
PMID:32858235
Abs of abs.
間質性肺炎は、非小細胞肺癌患者によく見られる予後不良な合併症の一つであり、肺臓炎の危険因子としても知られている。アテゾリズマブ単剤療法は再発非小細胞肺癌に対する治療法として確立しており、PD-1阻害薬に比べて肺臓炎のリスクが低いことが報告されている。今回は前治療歴のある特発性間質性肺炎合併の再発非小細胞肺癌に対して、アテゾリズマブ単剤療法の効果と安全性を評価した。特発性IPで慢性線維化のあるIPを対象とし。呼吸機能としてFVC70%以上で、免疫チェックポイント阻害薬の投与歴のない再発非小細胞肺癌患者を登録した。3週間ごとにアテゾリズマブ(1200mg)を投与し中止基準にかかるまで継続された。主要エンドポイントは1年生存率とし、サンプルサイズは38人に設定した。結果として肺臓炎の発生率が高かったため、本試験を早期に中止した。17人の患者が登録され、年齢中央値は70歳であった。ベースラインのFVC中央値は85.4%,拡散能は54.4%であった。全グレードの肺臓炎の発症率は29.4%(17例中5例)、グレード3以上が23.5%(17例中4例)、グレード5が5.9%(17例中1例)であった。蜂巣肺を有する患者の57.1%(7人中4人)にグレード3以上の肺臓炎が見られたのに対し、蜂巣肺のないもの(n=10)でグレード1の肺臓炎を発症したは1人(10%)だけであった。本研究に使用したクライテリアで定義した間質性肺炎を有する患者は、免疫チェックポイント阻害薬による肺臓炎のリスクが高い可能性がある。
感想
間質性肺炎と肺癌合併例の治療は長々と議論されていますが、なかなか進みません。厳密に行おうとすると間質性肺炎の定義が大切になりますが、画像だけでは最終的に決まらないため、どうしても雑多な集まりの間質性肺炎となります。特に肺癌はいわゆるCPFEの合併が多いので、間質性肺炎そのものを治療対象としている先生から見ると違った集団を見ていることになります。その中で今回の間質性肺炎としては、HRCTで肺底部の網状陰影を認めるもの(UIP型)または気管支血管束陰影中心のもの(NSIP型)を含めています。更にリスクを考慮してFVC=70%以上、%DLCOが35%以上とし、アテゾリズマブ単剤の投与の都合上プラチナ2剤投与後を対象としています。結果としては奏効率6.3%、病勢制御率62.5%、PFS3.38ヶ月でした。アテゾリズマブ単剤の2次治療以降の奏効率としては普通ですが、肺臓炎の多さは見逃せずやはり積極的に勧められるものではありません。特にリスク因子として、低体重、低ヘモグロビン、高CRP、蜂巣肺の有無が候補として挙げられており価値があります。間質性肺炎合併例でICI使用に迷うときなどは、暫定的な判断材料として使えると思います。特に現在はCOVID-19が蔓延しており、ICIによる肺臓炎も似たようなパターンをとることが多いため実施にはかなり慎重さが求められます。