オンコマインかAMOYか、不一致例は何が原因か

Clinical application of the AMOY 9-in-1 panel to lung cancer patients.

Kunimasa K
Lung Cancer. 2023 May;179:107190.
PMID: 37058787.

Abs of abs.
肺癌患者を対象に、AMOY 9-in-1 kit(AMOY)の精度を次世代シークエンサー(NGS)パネルと比較した。単施設のLC-SCRUM-Asiaプログラムに登録された患者を対象に、AMOY解析の成功率、治療標的となりえるドライバー変異の検出率、検体提出から返却までの時間(TAT)、相互の一致率について解析した。解析対象患者406名のうち、81.3%が肺腺癌であった。AMOYとNGSの成功率はそれぞれ98.5%。87.8%であった。AMOYでは54.9%に遺伝子変異が検出された。NGS解析が失敗した42例のうち、同一検体の解析でAMOYによってドライバー変異が検出されたのは10例であった。AMOYとNGSパネルが成功した347例のうち、22例で不一致の結果となった。22例のうち4例では、AMOYがEGFR変異バリアントをカバーしていなかったため、NGSでのみで変異が検出された。不一致の胸水検体のうち6例中5例で、AMOYでのみ変異が検出され、AMOYの方がNGSよりも検出率が高かった。TATはAMOYが5日間で有意に短縮していた。今回の結果からAMOYはNGSパネルよりも成功率が高く、TATが短く、検出率も高かった。AMOYで検出できる変異バリアントが限られているため、有望なドライバー変異を見逃さないように注意する必要がある。

感想
AMOYはEGFR、ALK、ROS1、BRAF、METに加え、5月から新たにKRAS、RETのコンパニオン診断薬として追加されました。オンコマインが将来的に治療ターゲットとなるかもしれないものも含め46遺伝子を測定できるのは大きな魅力ですが、TATが長いため治療を急ぐ方には不向きなのと、腫瘍細胞量が若干多く必要なので、ぎりぎりの場合検査エラーになる可能性があります。肺癌の先進施設では比較検討がさまざまに行われており、おおむね一致することがわかっています。問題は不一致の症例の変異が何でどのような場合に出るのかということです。これはTable 2にまとめられており、どちらか一方で出るケースと併存変異が追加で検出されるケースがあるようです。オンコマインではEGFR変異の検出率が下がるような噂もありましたが、これを見る限りではそうとも言えないようです。不一致の原因として、まず検体の問題があります。データに乏しい胸水検体に絞って考えた場合はAMOYが有効とされています。同じEGFR遺伝子変異でもバリアントがあり、また融合遺伝子変異では融合相手のすべてをAMOYがカバーしているわけではありません。そのため検出されないことがあるとされています。胸水の問題は現在では肺がんコンパクトパネルDxが使えます。日々変化するコンパニオン診断薬の世界ですが、実地臨床でトピックがうまくまとめられ勉強になりました。私はこれまでオンコマインで出していましたが、今回AMOYにKRAS、RETが追加されたことにより治療選択にはほとんど困らなくなったので、しばらくはAMOYで行こうかと思っています。