Low-Dose Computed Tomography (LDCT) Lung Cancer Screening in Asian Female Never-Smokers Is as Efficacious in Detecting Lung Cancer as in Asian Male Ever-Smokers: A Systematic Review and Meta-Analysis.
Triphuridet N
J Thorac Oncol. 2023 Jun;18(6):698-717
PMID:36775191.
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非喫煙者の肺癌は、世界的に癌死因の大きな部分を占めている。今回は低線量CT(LDCT)による肺癌検診の有効性を、系統レビューとメタアナリシスにより非喫煙者と喫煙者で比較した。2021年4月30日までに発表された喫煙者と非喫煙者の両方を含むLDCT研究を抽出した。主要目的は、非喫煙・喫煙間の肺癌の相対リスクである。合計14研究(アジアの13研究)を対象とした(喫煙者141396人、、非喫煙者109251人、1961人が肺癌と診断された)。肺癌の相対リスクは、全体では喫煙者対非喫煙者で1.21[0.89-1.65]、男性で1.37[1.08-1.75]、女性で0.88[0.59-1.31]であった。相対リスクは、アジア人女性の非喫煙者対男性の非喫煙者で1.78[1.41-2.24]、アジア人女性の非喫煙者対男性の喫煙者で1.22(95%CI:0.89-1.68)であった。対ハイリスク喫煙者(30pack-year以上)で0.99(95%CI:0.65-1.50)であった。非喫煙者対喫煙者のメタ解析では、初回検査時に肺癌診断(95.4% [84.9-100.0] 対 70.9% [95% CI: 54.6-84.9], p=0.010) とⅠ期(88.5% [79.3-95.4] 対 79.7% [71.1-87.4], p=0.071)が多かった。肺癌死亡および5年全死亡の相対リスクは、それぞれ0.27(0.1-0.55、p<0.001)および0.13(0.05-0.33、p<0.001)であった。アジアにおける女性の非喫煙者と男性の喫煙経験者のLDCT検診によって発見された肺癌の相対リスクは類似していた。LDCT検診で診断された肺癌による全死亡率および肺癌特異的死亡率は、喫煙者と比較して有意に減少していた。
感想
かつて肺癌はたばこが原因とされ、CT検診の研究は長く喫煙者を主体にして行われてきました。有名なNLST研究では、喫煙者でCT検診をして全死亡を6.7%減らせるという結果でした[NEJM2011 PMID:21714641]。非喫煙者のⅣ期での発見が多い傾向もあって、CT検診については統一した見解がなかったように思います。その意味で今回の報告は有用です。今回治療についてはあまり触れられていませんが、非喫煙者の肺癌に多く見られるドライバー変異に対する治療の進歩が大きく関与していると思います。今回の解析対象となった研究の期間として2000年以降、特に2005年以降の症例が多く含まれています(EGFR遺伝子変異が報告されたのは2004年です)。特にEGFR遺伝子変異の多いアジア人の女性を比較対象で見た場合EGFR-TKIの恩恵を受けていることは明らかでしょう。CT検診で喫煙男性(これまでの肺癌検診の有効性を証明された集団に類似)と同じ頻度で肺癌が発見され、死亡リスクは大幅に下がる、つまり治療効果がありそうということになります。もちろん非喫煙者におけるCT対レントゲンのランダム化試験で確認されることが望ましいですが、CT検診をやっても意味がないとは言えないと考えられます。本文中少し触れられていますが、非喫煙者に検診をするとなると比較的若いところから始める必要があり、何歳からかが重要課題になります。それに加え何歳までというのも現実問題として考える必要が出てきます。